小説「あ~こ」(18)

暗黒館の殺人

「暗黒館の殺人」綾辻行人

最後まで書いているので、犯人、ネタ、ばらしまくりです、注意!

前口上

 熊本県の山深い森の中に暗黒館と言われる館が建っている。

第一部 第一章 蒼白の霧

 1991年9月23日、江南(かわみなみ)孝明(たかあき)は濃霧の中、暗黒館に向かっていた。
 手には母方の祖父が愛用していた懐中時計。時計の裏側にはT・Eと彫られてある。
 死んだ祖父の名は遠藤富重(えんどうとみしげ)。暗黒館は中村青司が補修、再築に手を貸した館だった。
 孝明は死んだ母親の事を思い出す。彼女は重い病に犯された。孝明は兄と似ていない。
 病床で実は孝明は自分の子では無いと突然言ってきた母。エイプリルフールの冗談だったが。
 母と見た普賢岳の火砕流のニュース。父は出来る限りの延命措置をお願いし、母は殺してと言ってきた。

第二章 誘(いざな)いの囁き

 左目の所に大きな傷がある雑貨屋の主人は
江南が暗黒館に行くと言うとあそこには良くないものがおるから気をつけろと言った。
 江南は母の四十九日の法要の席で大叔父から暗黒館の事を聞いた。
 フランシス・コッポラが今度撮る「ドラキュラ」と言う映画の事とか色々な話がある中で、
突然大叔父が言ってきたのだ。
 あの懐中時計は母方の祖父が弟の大叔父の敬輔の古物店から買った物。
 大叔父は暗黒館の持ち主が家財を整理したがっていると言うので買いに行った事があるのだ。
 地震が起き、車をぶつけてしまう。誘われる声に導かれ、歩いて行く。
 鹿谷門実は留守だったので、留守電にメッセージを残しておいた。
 船に乗って島に渡り、声に誘われて、十角形の塔に上る。そして地震で、塔から落ちる。

第二部 第三章 墜落の影

 館は湖の中の島にあった。
 中原中也に似ていると言うので中也と呼ばれる私は塔から人が落ちるのを目撃する。
 私は一緒にいた浦登玄児と一緒に駆けつける。
 そこには使用人の羽取しのぶの息子でちょっと知恵が遅れている慎太少年がいて、
落ちた人がいる方を指さして逃げる。
 塔から落ちた青年は無事だった。
 暗黒館は外壁が黒、内装も基本的に黒で後は赤くらいしか使われていない館だった。
 青年は身元を示す物を何一つ持っていなかった。私は玄児と塔に入る。

第四章 空白の時間(とき)

 この館を作った玄児の曾祖父の玄遙はイタリアでジュリアン・ニコロディと言う建築家を知り、
彼の建築物をモデルにこの館を建てた。
 塔の上で懐中時計を見つける。
 玄児は自転車で私とぶつかり、それが元で私が一時的に記憶喪失になり、
私は彼の東京の家にしばらくやっかいになったのだ。
 青年が乗って来たらしい舟は流されていた。玄児には九歳か十歳前の記憶が無かった。

第五章 緋の祝祭

 青年は口がきけなくなっていた。館には緋色の絵があった。藤沼一成の絵。
 首藤利吉と言う玄児の叔父がまだ帰ってきていなかった。叔父は母方の祖母桜の婿、卓蔵の妹の子供だった。 私は玄児に誘われてこの館に来た。
 東館二階の客室にいると物音がして振り向くと廊下に通じる扉が閉まる所だった。
 追いかけたが、行き止まりの廊下で消えてしまう。

間奏曲 一

 少年。少年は暗黒館に向かっていた。事故にあった車と死体を見る。青年は目を覚ます。

第六章 異形の寸劇

 行き止まりの壁の向こうから声が聞こえる。右の燭台の蔭のレバーを動かすと、壁がまわった。
 秘密の階段を抜けた先は舞踏室。そこに美鳥と美魚と言う少女がいた。シャム双生児。
 私の様子を窺っていたのは彼女達だったのだ。
 姉妹は舞踏室から出て行き、私は誰もいないはずなのに男の声を聞く。

第七章 惑いの檻

 暗黒館は中庭を四つの建物が取り囲んでいるものだった。中庭には小さな四角い建物。
 鉄の扉には錠前がかかっていた。中には階段があり、地下に続いていた。私は浦登征順に出会う。
 彼は玄児の母カンナの妹望和の夫だった。彼からのあの四角い建物が惑いの檻と言う名前である事を知る。
 しのぶが中也を呼びに来る。青年が目を覚ましたのだ。青年は江南と言う字を書いた。名前らしい。

間奏曲 二

 少年。名は市朗。彼は転校生が暗黒館を見たと言うのを聞き、自分もと思ったのだった。
 あの館は市朗達にとって禁忌と恐怖、そして好奇の対象であった。
 一人で行けば、みんなの尊敬を得られるに違いない。地震で山が崩れ、帰れなくなる。
 湖畔の桟橋のそばには小さな四角い建物。
 中にいた男は包丁を研いでい、市朗は彼には声をかけず、駐車場のジープの荷台で夜を過ごす。
 江南は殺してと言った母親を思い出す。

第八章 兆しの色

 江南青年は煙草を持っていたが、マッチもライターもどこを探しても見つからなかった。
 塔の中の足跡は江南青年のしか無かった。塔の上の座敷牢にはかつて玄児が閉じ込められていた。
 彼自身は憶えていなかったが。船以外には浮橋と言う手段もあったのだが、見に行ったら壊れていた。
 湖は赤くなっていた。土砂崩れのせいだろう。

第九章 午後の無惨

 湖畔の建物に常駐している蛭山が乗ってきたエンジンつきの船が岸に激突して大破した。蛭山は瀕死の重傷。 中也は征順の息子、清に出会う。彼は早老症で、浦登家ではたまにこの症状の子供が生まれていた。

第十章 迷宮の調べ

 北館の食堂で玄児と食事。サロンに場所を移そうと玄児。中也は煙草を取りに部屋に戻る。
 北館に戻りピアノの音を聞く中也。美鳥と美魚が音楽室で弾いていたのだ。彼女らと一緒にサロンに行く。
 彼女達は猫を紹介すると言う。チェシャと言う名前。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を思い出す中也。 サロンには音楽を流すからくり時計があった。

第十一章 闇の宴

 時計は古峨精計社の物だった。中也はダリアの宴に招かれる。ワインを飲み、パンにペーストを塗って食べる。 変な味。中也が飲もうとしたり、食べようとするたびに、宴に集った者達皆が中也を注視するし。
 スープを食べるのをためらっていたら、「食したまえ」と皆が唱和する。食べる中也。
 中也は征順から宮垣葉太郎の署名本があると言われる。興味がおありになるならお見せしましょうかと。

間奏曲 三

 市朗は浮橋を渡って館のある島に行く。慎太に廃屋にかくまわれる。
 そこにある机の引き出しには色々な物が入っていた。札入れとかマッチとか。

第三部 第十二章 混沌の朝

 蛭山が殺された。蛭山自身のズボンのベルトで首を絞められたのだ。
 蛭山が寝かされていた部屋にはしのぶがいる部屋を通らなければ行けないはずだった。

第十三章 疑惑の扉

 蛭山がいた部屋には秘密の扉から入れた。

第十四章 無音の鍵盤

 双子の母の美惟は双子が生まれてから、狂ってしまっていた。
 彼女は毎日かつてオルガンがあった場所に行っては、ピアノを弾く動作をした。

第十五章 無意味の意味

 チェシャは黒猫だった。今は剥製。中也は玄児と話す。
 死にそうだった蛭山をどうしてわざわざ殺さなければならなかったのか。

間奏曲 四

 市朗は館に入る。

第十六章 宵闇の逃走

 玄児が中也を呼びに来る。
 望和はアトリエにいる事が多いのだが、そのアトリエの前にブロンズ像が転がっていて、
ドアを開ける事が出来ないのだった。
 像は一人ではどうしようもないほど、重かった。
 玄児と中也、そして医者の通称、野口、本名は村野英世先生と一緒に、ブロンズ像をどかす。
 像を倒したのは医師によると、首藤の息子の伊佐夫らしい。酔っ払って、やったみたいだ。
 部屋では清の母親の望和が殺されていた。彼女のスカーフで首を絞められて。
 隣室のガラスが破られていた。その向こうは赤の広間。赤の広間から外に逃げ出す人影。少年だった。
 少年は塀に阻まれ、泥溜りの中にしゃがみ込む。
 少年は玄児にうながされ、立ち上がるが、足を踏み出した途端に、全身がはまってしまう。
 何とかそこから出たが、体中に人骨がまといついていて、少年は恐慌をきたす。
 中也もムカデに噛まれ、気を失う。

第四部 第十七章 追憶の炎

 中也は思い出す。母に叱られたのに、遊びに行き続けた誰もいない洋館。
 母は洋館が火に包まれた時、中に飛び込んで行ってしまった。
 私が火事の騒ぎを知ったのはその何十分か後。その時家にいなかった。

第十八章 暴虐の残像

 あの大量の人骨は玄遙の妻ダリアが殺した人達の物。望和が描いていた絵は異様な物だった。
 三本指の足の男に組み敷かれている若い女。描かれている花はカンナ。玄児の母親の名もカンナ。

第十九章 抜け穴の問題

 アトリエの隣の部屋には隠し通路があった。

第五部 第二十章 消失の夜

 子供の時、玄児は座敷牢に閉じ込められていた。
 なぜお父様はそんな事をしたのかを聞こうと曾祖父に会いに行く。倒れている玄遙。
 殺されていた。知らない顔の誰か。父親の声を聞き、振りむいて、部屋の中をもう一度見たら、誰もいなかった。 カンナの父卓蔵も首を吊って自殺していた。
 やはり首を吊って自殺した妻の、桜のもとへわれもゆかん、と書き残して。玄遙を殺したのは卓蔵と思われた。  その後、玄児は火事に巻き込まれ、記憶を失う。

第二十一章 妄執の系譜

 ダリアの宴で中也が供されたのはダリアの肉だった。
 ダリアは家族に自分を殺してもらい、その肉を自分の誕生日で命日でもある日に食べるよう指示を出したのだ。 肉は塩漬けにした。葡萄酒には彼女の血液と骨の乾燥粉末が入っていた。浦登家は短命の家だった。
 妻と二人の子を流行病で亡くし、玄遙は旅に出る。イタリアでダリアに会う。
 玄遙はイタリアで病に犯され、ダリアが自分の血を与えてその命を救った。
 ダリアは闇の王と誓いを立て、不死性を獲得したと言う。契約とは、「光よりも闇を愛す」。
 そして玄遙はダリアを妻とし、彼女の契約に即した館を立てる。
 湖には人魚伝説が伝わっていて、この地を選んだ。

第二十二章 暗黒の眷属

 卓蔵は誰かの子供を宿したダリアと玄遙の一人娘桜と結婚をする。その子供の父親は玄遙。その子がカンナ。 桜は若い日の母親に似ていた。ダリアはその事で狂った。
 不死性の次の段階、不老性を獲得しようと、村の若い女や子供を攫ってきて、実験をした。
 十三人が虐待や拷問で殺された。
 彼女は王の契約とそぐわぬ事をしたと思い、力のある自分の血肉を家族に分け与えようと決めた。
 卓蔵は打算で結婚したが、玄児の父親、柳士郎はカンナを愛して結婚した。カンナは玄児を生んで死んだ。
 その秋には桜が自殺した。玄児は血液型から自分の父親は卓蔵ではないかと言う。
 だから柳士郎は玄児を憎んだのだ。しかし望和を画を見ると違う考えが浮かぶ。
 玄児の父親は玄遙かもしれない。

間奏曲 五

 市朗は赤の広間で見た、望和を殺したらしい犯人の顔に見覚えがある気がする。

第二十三章 無明の夜明け

 玄遙が殺された部屋にも隠し扉があった。惑いの檻は墓所だった。
 惑いの檻と呼ばれるようになったのは桜が自殺してから。ダリアの肉を食した者は自殺をしても死ねない。
 呼吸が戻り、心臓が動き出しても、桜の意識は戻らなかった。卓蔵は惑いの状態を示さなかった。
 彼が実は自殺では無く、殺されたとしたら納得できる。玄遙は一旦死んだのに、息を吹き返した。
 しかし廃人同然で、柳士郎は惑いと断定、彼を惑いの檻に入れる。
 檻の中で柳士郎は立ち上がって動くようになった。ダリアの頃からの使用人鬼丸老が彼に食事を与えている。  玄児は中也を自分に似ていると思い、ダリアの宴に招いたのだった。

第二十四章 分裂の明暗

 中也は美鳥達に切り離す手術をするつもりは無いのか聞く。
 「切り離されて、二人がばらばらになっちゃうくらいなら、死んだ方がましだわ」と二人は恐慌をきたして嫌がる。 双子をなだめて、二階の客室に戻る。清に起こされる。玄児が呼んでいるのだ。市朗が何かを話したらしい。
 部屋を出ると双子達が中也を見つけて階段を昇ってくる。その時地震が。
 階段の吹き抜けのシャンデリアが嫌な音を立てて双子達に向かって落ちる。
 双子は避けるが、階段から落ち、ばらばらになる。二人はすでに手術をしていたのだった。美魚は重傷だ。

第二十五章 真昼の暗雲

 市朗の話で慎太が隠していた江南の札入れ、懐中時計が見つかる。
 中也は犯人は玄遙ではないかと言う考えを玄児に話す。二人は惑いの檻を見に行く。
 檻の向こうには三本指の足跡がついていた。鬼丸老は靴を履いているから、あれは玄遙のもの。
 しかし鬼丸老の話では、玄遙が外に出る事は決して無かった。

第二十六章 欠落の焦点

 市朗の話では、車の横で死んでいた男はベルトで首を絞められて殺されていた。
 その死体はおそらく首藤利吉。中也はある考えを確かめるために玄児と一緒に玄遙が殺された部屋に行く。
 描かれた絵の後ろには鏡があった。鏡は隠し扉の壁にある。
 その隠し扉が開いていて、幼い玄児はその鏡に映った自分の姿を見たのだ。当時の玄児は鏡を知らなかった。 これで柳士郎のアリバイは無くなる。しかし今度の殺人は柳士郎では無いと玄児は言う。江南。
 江南はかつて玄児の世話をしていた諸井静の息子の忠教だった。

間奏曲 六

 彼らの現在は一九五八年、昭和三十三年。

第二十七章 暴走の構図

 首藤利吉は精神病院から忠教を引き取って来たのだった。忠教は母親を殺していた。
 彼女は長崎で被爆し白血 病にかかっていた。
 彼女は忠教に困った時には柳士郎に会いに行けと言っていたそうだ、あの懐中時計を持って。
 それを聞いて首藤は忠教が柳士郎の子供と推測。
 忠教を使って、柳士郎を脅し、ダリアの宴に参加を許されようとしたのだ。
 忠教が母親を殺したのは病苦を見かねたからでは無いかと玄児は推測する。
 首藤も重症で苦しんでいたから殺した。蛭山も。望和は息子の代わりに死にたいと言っていたから。
 市朗は慎太の隠れ家で忠教の子供の頃の写真を見ていた。
 だから犯人に見覚えがあると言ったのではないか。しかし忠教にはある身体的な特徴があった。
 指の癒着を切り離したような外科手術の痕があるのだ。玄遙の三本指。忠教は玄遙の子。
 玄児は廊下の方に声をかける。そこには柳士郎がいたのだ。柳士郎は自分が玄遙と卓蔵を殺した事を認める。 玄児を座敷牢から出す事にしたのは、カンナに似てきたから。
 そして玄児の父親は玄遙と知った事により、殺意がふくらんだ。それまでは卓蔵と思い込まされていたが。
 懐中時計はダリアの形見。三人は柳士郎の部屋へ移る。
 そこに南館に落雷があり火事になったとの知らせが入る。忠教は柳士郎の子だと柳士郎。江南こそ玄児。
 玄児は忠教だった。昔の火事で、玄児と忠教、両方とも記憶が無くなった。それを利用して入れ替えたのだ。
 美惟と望和はその考えに協力してくれた。使用人は皆解雇した。鬼丸老は何もしゃべらない。
 静もそれを承諾したが、彼女はその代りダリアの肉を所望した。「助けて!」と言う女性の悲鳴。美鳥だった。
 江南は美魚を殺し、美鳥を追って来たのだ。二人は切り離さるくらいなら死んだ方がましと言ったから。
 玄児が江南を止めようとするが、狂った江南の方が強かった。
 柳士郎が江南を玄児と呼び、彼を自分の書斎に呼びいれ、戸を閉めて火をつける。市朗は南館にいた。
 火事から逃げるが、ついてきたはずの慎太がいない。慎太は家族の写真を取りに戻ったのだった。
 市朗は慎太を助けに行き、左の顔面に火の粉を浴びる。
 玄児は居間の方から書斎に入れるので、そこに行き、中也の目の前で扉を閉めてしまう。
 中也は美鳥と美惟を助けて逃げる。
 中也は新たなこの館の主人となった征順から屋敷の補修、再築の依頼を受ける。
 中也の本当の名は中村青司。

第六部 第二十八章 封印の十字架

 江南が目覚めたら鹿谷がいた。過去を見たと言うと、夢だと鹿谷。
 しかしそこに現れた老紳士はこの屋敷ならありうると言う。彼は浦登征順だった。
 彼は病院や警察にはいっさい連絡していなかった。
 村野先生は亡くなっていて、家人の医師が江南の様子を見たらしい。江南は屋敷の様子が昔と違う事を聞く。  青司の提案で変えたらしい。その変化の元、渡り廊下を見せてもらう。シューベルトのピアノ曲が聞こえる。
 鹿谷が小柄な黒いフードの人間を見る。惑いの檻。そう、中庭に十字架状に渡り廊下が渡されていたのだった。

感想:美少女のシャム双生児は魅力的。うん、はい、ばらばらにはビックリしました。
 いくつか引っ掛かっていましたが、過去とは最後まで気づいていませんでした。
 ですから、彼が犯人とは露ほども思わず。家人に医師という事は玄児は大丈夫だったのかな。
 鬼丸老はダリアの肉が利くと言う証拠か。市朗少年、がんばりましたね、お気の毒。
 他の館を一つも読んでないので、館を読んでいる人なら湧くであろう感慨が何も無い。
 とりあえず、黒猫館買いましたが、読むのは大分先になりますし。
 採光部分が極端に少ない館と言うのは、寒そうですが、
サングラスかけると光の柔らかさに感激する人間の私には、悪くは無いかも。
 でも、この館には住みたくは無い。実際ダリアの肉って、呪いその物だし。
 でも、どこにも通じてない階段とか、隠し通路とかは、大好き。

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雨にもまけず粗茶一服

「雨にもまけず粗茶一服」松村栄子

最後まで書いてる長すぎるあらすじです。注意!

 遊馬(あすま)は免許証と一緒に高速道路のレシートを落とし、受験勉強をしている振りして教習所に通い、
入試に行く振りしてコンサートに行っていた事がばれる。
 怒った父、秀馬(ほつま)は遊馬に比叡山の天鏡院で修行して来いと言う。
 遊馬は五つの大学を受けてる事になっていたが、実は四つの京都の大学は受けず、東京の一つだけ受け、
落ちていた。
 親としては、茶道をやるにあたって、江戸ぶりだけでは通らない局面があるので、
京都の茶を仕込まれてこいと京都の大学を受ける事を勧めたのだが。

 彼の家、友衛家は武家茶道坂東巴流を継承しており、村上源氏の流れを引く家柄。
 京都にもう一つ巴家と言う茶家があり、これも友衛家から出ている。

 カンナが遊馬に握り飯と麦茶を持ってくる。
 彼女は小さい時足を踏ん張って、頬を真っ赤にして、
「たのもう、たのもう」と友衛家の門前で甲高い声を張り上げ、内弟子の、祖父、弥一を訪ねてきた。
 彼女は女性の門弟第一号になる。坂東巴流は剣も弓もやっており、彼女の剣道はそうとう強い。

 京都の巴家が宗家で、遊馬の流派は小さい。
 遊馬は中学生の時京都に行き、巴家の後継ぎは一つ年上だったが、彼に、
「坂東巴流ねぇ。ちんまりしたはってええねぇ」と言われた。
 ムッとしたが何も言い返せなかった。で、京都には行きたくない。
 遊馬、弟の行馬(いくま)にこの家継ぐ気ないかと聞くが、
彼はカンナに変な事を口走るとお家騒動になると固く諌められていた。
 弟には人生設計も遠大な計画もある。当てにされても困る。遊馬は家出する事にする。
 弟が家出のアドバイスをする。彼は小四の時軽い家出をした経験があるのだ。その時、彼は悟った。
 うちの流派も京都の流派も最初に作ったのは次男か三男。
 本家にいても用無しの息子が外に出て一から一生懸命作った。しかし跡を引き継ぐのは長男。
 ご先祖を見習って、自分の運命は自分で切り開かなくちゃいけない。行馬は家出する遊馬に茶杓を渡す。

 家出先は高校時代のクラスメイトでバンド仲間の萩田のマンション。
 ただただ音楽を聞き、ギターやベースの練習をする日々。

 二三週間経ち、萩田が旅行に行くと言う。
 ヴォーカルの久美ちゃんが帰省する友達について遊びに行くので車を出してくれないかと言うのだ。
 京都まで一人で運転するのはつらいと遊馬も誘われる。
 そう久美ちゃんのお友達は翠(みどり)ちゃんと言う京女なのだ。京都を嫌がる遊馬。
 しかし冷房代にも金がかかると言われる。彼は一文無しで世話になっていたのだ。
 遊馬は家から持ってきた茶杓を取り出す。売るつもりだ。友達には茶道の家と言うのは秘密にしているが。
 茶杓は徳川慶喜作で、百万でも二百万で良いそう。
 道具屋は手元に現金が無いので明日いらしてくださいと言う。次の日、行ってみたら、そこに弥一がいた。
 遊馬は仕方なく京都に行く。京都では友衛と言う苗字は目立つので、萩田にアズマと呼んでくれと頼む。
 遊馬は途中、京都弁を気持ち悪いと言い、翠ちゃんを泣かせる。

 翠ちゃんの家は畳屋だった。祖母は茶道の先生で、巴流だった。
 遊馬は翠にお茶とかお華とかあんな澄ましたものは大嫌いだと言う。

 萩田は帰るが、おまえは乗せていかないと遊馬は言われてしまう。久美ちゃんに嫌われたのだ。
 ギターもへたなので、バンドの練習ももういい。家に電話をかけようとするが、バッテリーが切れていた。
 彼は翠ちゃんのお父さん、高田さんの手伝いをする。寺が嫌で家出したと言ったので、寺の子と思われる。
 途中、不動産屋による。そこの紹介で得た仕事だからだ。そこの哲さんは翠の幼馴染、翠にご執心だ。
 彼は熱心に店を売る事を勧める。町家がはやっているのだ。
 彼は一人ではす向かいに住んでいる祖母の事も心配だろうと言う。
 高田は遊馬がばあさんの面倒を見ると言う。遊馬、しばらく翠ちゃんの祖母の家に居候する事になる。
 志乃に信楽の水差しを出してと言われて、水差しを濡らして水を入れる。
 祖母、志乃はお茶を点てようとするが、翠がアズマ君はお茶大嫌いと忠告、いづらくなって外に出る。
 寺の門をくぐる。リュックから茶杓を取り出し、売るしかないと考える。
 転がっていた棒に気づき、久しぶりの素振りをし、大木を打ってみたら、咎められる。お坊さんだ。
 棒は茶杓にしようと干していたもの。坊さん、茶杓の筒に気づく。やってきた哲も気づく。
 彼、坊城哲哉は茶をやっていた。坊さんの名は不穏(ふおん)。二人とも巴流。
 遊馬、不穏に茶杓を持って茶会の手伝いをするように言われる。
 遊馬は、翠の評判の事もあるので、畳屋の仕事を習いにきた事になる。
 翠のアズマへの意地悪な言い様を叱る志乃。
 翠はアズマが京もお茶も好きやないと言ったと主張するが、
信楽のお水差しをとっぷり濡らして置いたアズマが茶を知らないとは腑に落ちない志乃。
 翠は久美ちゃんからアズマ君のお父さんは警察官と聞いていて、
寺の子と言う事になっている遊馬に不信感をいていて、その事を話す。
 しかし、その不信を哲哉と志乃に話した事で、幾分気が晴れる。

 不穏のお茶会。遊馬、茶巾と盥を取ってきてと哲哉に命令され、茶巾を盥で絞り、茶碗に畳んで入れる。
 茶筅を乗せたら、茶筅が逆さまと哲哉に注意される。
 しかし、後から来た男、今出川(いまでがわ)幸麿(ゆきまろ)に間違っていないと言われる。
 幸麿はどちらの流儀と訊くが、遊馬はでたらめでしたと言う。茶巾をつまみ上げる幸麿。
 そのたたみ方は坂東千鳥と言う特徴的な物だった。

 茶杓を売ろうとするが、徳川慶喜の作と言っても京の道具屋の反応は悪い。
 ある店主なんかさんざんほめた後、京都では徳川さんの茶杓は使いづらい、ところでこれはどうですと、
筆ペンで書いたばかりの札を置いた<伝 宮本武蔵作>の茶杓を見せてき、ばかばかしくなった。
 遊馬は托鉢僧を見て思いつく。不穏から托鉢の道具を借りて托鉢して金稼ぎ。
 しかし錫杖をジャラジャラしていたらからまれ、坂東巴流の剣道で撃退、逮捕される。不穏が引き取りに来る。
 彼は茶杓の筒に百円玉を詰めていた遊馬を茶杓とは先人への敬意と表すための物、
茶杓そのものより作者や銘が尊重される事さえあるのに、
それを記している筒にあさましい金銭を詰め込んでと叱る。
 浄財ですと反論したら、そうですね、浄財にしなければと、金をさい銭箱に入れられてしまう。

 遊馬はギターを売る。翠は一緒に帰らないかと言うが、もう少しここにいてみると遊馬。
 翠は気になっていた遊馬の家の事を聞いてみる。
 遊馬ははっきりした事は言わなかったが、騙されてるわけでは無いらしいと翠はほっとする。
 遊馬、身元を偽っている事もあり、髪も青く染めているので働き口が無く、ガソリンスタンドか、道路工事か、
夜の商売か…、志乃が小遣い稼ぎとゆうたら新聞配達しか思いつかしませんわと言い、哲哉、
新聞配達がええかもしれへんと言う。
 新聞屋が不穏さんの檀家なのだ。
 敬老の日、檀家の長命な老人達をもてなす会があるから、その日に来てみたらと不穏。
 スタッフになる若手がいないのだ。新聞屋も来る。志乃は翠も手伝いにつけてくれた。
 翠がお茶を点てたが、不穏が疲れたろうから、遊馬に替わってもらってはと言う。
 お茶にお湯を注いで茶筅を振るだけだと。遊馬、替わる。客達の話はつい先日亡くなった魚正さんの話になる。 話が面白いので気を取られ、小声で言われた仕舞いの合図に無意識で片付けてしまい、気がついた時には、柄杓と蓋置は棚の上で弓の荘り(かざり)に置かれていた。
 翠も不穏も不思議そうに遊馬の手元を見つめる。新聞屋の夫婦に引き合わされ、彼らと一緒に店まで行く。
 遊馬は茶がおいしいと褒められる。
 どちらの先生についているのか聞かれ、誰にもついていないと答えたら、背筋が伸びてて、
指の先までぴんとして、それでいてどこにも力が入っていない、昨日や今日始めたひととは違うわと言われる。

 遊馬、幸麿にゴアテックスのヤッケを貸すから、不穏の寺へ来いと言われる。
 幸麿はそこで魚正の茶道具を遊馬に見せる。彼の姉夫婦が道具屋をやっいるのだ。
 道具はすべて魚に関係がある意匠だった。
 魚屋にあってこその値打ちある道具一式だが、息子はどうしても処分したい。
 息子は一番値打ちがある持ち物が見つからないと言う。大海。大きくて平べったい道具。
 茶入れは誰にも貸していない。ではどこにあるのか。
 幸麿は魚正のおじいさんの気持に気づき、場所を言えなかった。
 遊馬が答えがわかるまでヤッケはお預けと幸麿。遊馬は気付く。それは床下の炉だ。
 茶を知る人なら真っ先に思いつく。魚正のおじいさんは家族にこそ発見してもらいたかったのだ。

 私立高校の和室の畳替えの手伝いに行く遊馬。
 女の子が指輪を見つけたら教えてくれと言う、先生には内緒で。指輪は見つけた。
 連絡したら、東門の弓道場のあるとこに来てくれとの事。そこには幸麿もいた。幸麿はこの学校の先生だった。 気付かれぬうちに退散と踵を返したら、目の前に行馬が。「お兄ちゃん!」カンナに気づかれ、取り抑えられる。 女の子は桂木と言う名前。
 行馬は中東部の受験生で、剣道部と弓道部を見学したいと言うので、中学には弓道部が無いので、こちらに。  行馬は坂東巴流の家元の御子息で、ならお兄ちゃんと呼ばれていた人も…。遊馬、正体がばれる。

 行馬、どうせ京都の空気を吸うなら早い方が良いとこちらの中学を受験。受かったら巴さんちに下宿。
 茶杓の事で家は大変らしい。
 あの茶杓持っていけってよこしたのはおまえじゃないかと遊馬は言うが、
行馬としては坂東巴流の嫡流の証明として渡したらしい。
 家宝なのだ。武蔵の茶杓まで持ち出すなんてサイテーと非難される。しかし遊馬には覚えが無い。
 遊馬は伝宮本武蔵作の茶杓を思い出す。
 ひどく華奢に見えて、武蔵作とは思えなかった事を話したら、武蔵の茶杓は細いらしく、その店に赴く。
 売れていた。誰かは知らない。身うちの犯行としか思えない。
 今秀馬に言ったら遊馬の仕業と決めつけられ、日本刀で遊馬に斬りつけかねない。
 遊馬、プリペイド式の携帯を渡される。
 カンナ達は去り、正体がばれた遊馬は高田夫婦に茶をふるまう事になる。
 高田さんはあんさんは、お茶、好きやでと言う。
 遊馬は昨日からの流れで疲労困憊、ぐっすり寝入り、気がついたら、夢のように美しい女の人に起こされ、
夕刊配達に出かける。

 高田は不穏の師匠にあたる禅寺の茶室の畳替えをし、そこの茶会に誘われ、高田は遊馬をよこす。
 不穏も行く。不穏はそこで食籠を傷つけてしまう。
 翌日食籠を修理させていただこうと思ったら、和尚はあれは一閑堂、昨日の茶会の正客の息子、
次客の夫が直しに出すと言う。
 寺には一閑堂もいて、和尚は不穏に大海を見せる。
 箱は新しかったが、一閑堂はご希望でしたら、お家元に書きつけもろてきますし、
遠州でも不昧公でも探さしてもらいますと。
 探すと言うのはねつ造すると言う事。一閑堂は金沢の呉服屋の蔵から出たと言う。
 しかしそれはあの魚正の物。茶入れが見つからないので、一閑堂に頼んだのだ。
 不穏は真実を告げれば、失礼しましたと言ってよそへ持って行き、
遠州の箱書きのついた古めかしい箱に入れるかもしれないと、黙っている。

 不穏はその事を幸麿に話す。そこに哲哉に無理矢理連れられた遊馬も来る。
 一閑堂の話をしていたと哲哉に言ったら、えげつないひとだが、
家元が書いた軸や削った茶杓を売りさばくがうまいから今や№1の道具屋だと言う哲哉。
 幸麿は遊馬にこないだのお茶杓も良かったけど他にもええもん持ってはんのとちがいます?と聞き、遊馬、
武蔵の茶杓を思い出し、話す。
 数日後に連絡をよこす幸麿。一閑堂が持っているらしい。
 風林堂と一閑堂は同級生で、風林堂が武蔵のお茶杓の事を言い、一閑堂はにべもなかったが、
すぐに素人さんが買いに来たそう。
 一閑堂がよこしたのではないか。
 カンナは遊馬の事は伏せたが、武蔵の茶杓については秀馬に話してい、
彼は宗家巴流の氷心斎に協力を求めていた。
 氷心斎に最も近い一閑堂が手に入れているのなら連絡があってもよさそうなもの。隠しているのだ。
 どこかの数寄者や田舎の富豪に持っていかれるとコト。証拠をつかまないと。
 買っていったのは三つ鱗の紋を背負っていた五十年配の女性。遊馬にはその紋に見覚えがあった。
 この前の茶会で一閑堂のおばさんと一緒に来てた女性。茶杓は見つかる。
 祖父の風馬が一人で引き取りに来る。
 彼は武蔵の茶杓紛失がショックで寝込んでいたので、遊馬に世話を頼むカンナ。
 風馬は氷心斎巴朱鶴に遊馬が持ち出した事になっている武蔵の茶杓流出の本当の事を話す。
 ばあさんが亡くなり、代も譲り、サヤカと言うばあさまに恋心を抱いた。サヤカはもてた。
 遠方から訪ねて来る幼なじみをもてなすと言うので、酒屋は酒を、八百屋は野菜を、
サラリーマンだったじいさんは買い物を手伝うと言うので、風馬、門外不出の茶杓を貸してあげようと言った。
 サヤカは感激し、借りた茶杓を毎晩抱きしめて寝て、そのまま亡くなった。
 風馬は呆然としていたが、気が付き、家族に茶杓の事を聞いたら、棺桶に入れたと言う。
 棺桶はもちろん火葬場で燃えた。おそらく、他のじいさんがやっかみ、茶杓を棺桶から取り出したのだろう。
 風馬は息子の秀馬に真実を言えない。ただでさえ態度がでかいのに、もっとひどくなるのは目に見えている。
 武蔵の茶杓は遊馬が盗んだ事になっている。遊馬もそれで納得した。
 しかし、自分が亡くなったら、息子に真実を話してくれと風馬は氷心斎に頼む。
 風馬、タクシーに乗ろうとして倒れ、病院に入れられる。
 病院にかけつけた遊馬に対応したのは穏やかで優しそうな青年で、
巴家の後継ぎと会った時に出会っていた人だった。

 志乃の住んでいる離れから美しい女性が出てくる。いつぞや起こしに来た女性だ。
 彼女は奈彌子、巴流のお譲さまだった。遊馬、口止めするために彼女を追いかける。
 家出して勘当された事を話すと、なぜか泣き崩れる奈彌子。遊馬、困りはて、不穏の寺、長命寺に連れていく。 不穏は彼女を次の日曜日の幸麿邸の茶会に誘う。

 茶会。 幸麿は生徒達を連れてきていた。
 携帯が鳴り、高田家に遊馬に会いに来ていたカンナからだったが、彼女も桂木佐保と一緒に来る。
 入口がわからなくてうろうろしてたら、佐保が来たのだ。
 幸麿を真中に女性達はお庭で茶を飲み、縁台には遊馬と哲哉と不穏が残る。哲哉は奈彌子の事を話しだす。  彼女は、遊馬が病院で会った男、鶴了と恋仲だった。
 しかし巴家の総領息子が死に、奈彌子の婿が継ぐと言う事になった。
 しかし花屋の息子の鶴了では格が足りなかった。
 志乃は、自分の家で奈彌子と鶴了が会えるようにしていたのだ。

 不穏が伊織と称する子供を連れて来る。托鉢僧として暴れた遊馬を見て弟子になりたいそうだ。
 不登校の子だった。

 大みそか、鶴了が来る。彼は来年から札幌の道場に詰める事を命じられていた。
 彼は憂いに満ちてい、志乃は彼を引きとめる。遊馬は鶴了にいっそ坂東巴流の家元になったらと言う。
 友衛遊馬ゆう立派な後継ぎがおるやないですかと言う鶴了に
「家元んちに生まれたからって、家元に向いているとは限らないし」と遊馬。
 巴家のぼんも似たような事を言っていた。
 遡れば養子が結構いるし、巴家に生まれたとゆうたかて、家元と継ぐ資格にはならん。それで良く勉強した。
 しかし色々言う人はいるし、大所帯なのでお茶とは関係ないややこしい事もある。
 もっと小さな流派だったら、お茶の事だけしてられたのに。“ちんまりしたはってええねぇ”
 あれは皮肉ではなかったのだ。

 遊馬は佐保と付き合うようになる。

 伊織の本名は宮本一郎。伊織は気付いていないが、いつも母親がそっと見守っていた。

 遊馬、哲哉の言いつけで、不穏にお茶会の予定を聞きに行く。不穏は写経をしていた。
 「鏡清 僧に問う、門外これ何の声(おと)ぞ。僧云く、雨滴の声」あるとき鏡清という老師が若い僧に聞いた。
 外の音は何だ。若い僧は答えた、雨だれの音ですと。“雨滴聲”と書かれた軸がかかっていた。
 「草裏漢」と書いた紙を滑らして来る不穏。そうりのかん。ひよっこ野郎と言う意味。「明珠在掌」
 みょうじゅたなごころにあり。誰でも珠は持っている。磨かなければ意味が無い。「臥龍」
 いずれ天に昇るときをじっと待っている龍。最後に「日々是好日」をよこして来る。みな、圜悟の言葉。
 幸麿が圜悟の軸では無いかというのを持って来たのだ。風林堂が持ち込んだのだ。
 いつもなら一閑堂に聞くのだが、武蔵の茶杓の件で欺いたのが許せない。
 受験んシーズンで忙しい幸麿の代わりに不穏が真珠庵の和尚に持って行って訊く。偽物だった。
 そこからの帰りにカンナに会う遊馬。彼女は幸麿と付き合っていた。風林堂は一閑堂をこの軸でだます。

 奈彌子が突然高田家に現れる。妹の眞由子が行馬と結婚して巴流を継ぐと言うのだ。
 志乃から行馬の気持ちを確かめろと言われる遊馬。なんと行馬の遠大な宗家乗っ取り計画だった。
 行馬は覚悟を決めていた。
 眞由ちゃんを幸せにするし、奈彌子さんも笑顔を見せられるようにするし、鶴了さんも帰ってこられるし、
宗家のおじさんは安心するし、亡くなったボンも天国で喜ぶ。
 責任を背負うつもりだった。そうなると問題は遊馬だった。
 坂東巴流の行く末が決まらないと、行馬を宗家巴流の家元にするわけにいかない。
 氷心斎は行馬から遊馬の居場所を聞き、子供の頃から知っている志乃に遊馬の器量を聞く。
 なかなかやるけど、自分が納得できない事は絶対わかったと言わない。
 なんだかんだ言って友達と茶もするし、剣道も弓道も始めた。好きなのだ。しかしその事がわかっていない。
 前にも相談した事を思い出す氷心斎。息子が良い濃過ぎて物足りないと相談したのだ。
 しかし最後に親不孝をした。事故の事を話す氷心斎。息子は先先代の時から働いていた爺やに教わっていた。 爺やは足腰が立たなくなり巴の家を出て行こうとした。
 息子の比呂希は別れの一服を彼のために点てようと思った。
 茶会の水は夜明け前に汲む物だから、北山の湧水を未明に汲みに行き、飲酒運転の車を避けようとして、
重いポリタンクせのせいでバランスを失い、轢かれた。
 爺やは、荷物も置きっぱなしで行方不明になった。志乃からそれを聞いた遊馬は心が落ち付かなかった。
 何か叩くものは無いかと不穏に言うと、座禅をしてみたらと言う。
 わかんないけど、なんでわかんないかはわかった気がする。
 遊馬は比叡山の天鏡院に行って、脚を踏ん張り、「たのもう!たのもう!」と声を張り上げた。

 幸麿は友衛家に結婚の申し込みに行く。
 立派な表具の掛け軸が目につき、ほめたら、良く見るとずいぶん変わった趣味のものだった。遊馬筆の物。
 秀馬は満足げに微笑む。幸麿が遊馬も知っていると知り、遊馬の手紙を持ち出す秀馬。
 「一筆啓上 御父上御母上にはお変わりなくお過ごしのご様子祝着に存じ奉り候 
小生このほど御父上の命に従い比叡山天鏡院に参籠仕り候 一年の遅参となりしことはお許しいただきたく候 今は柴門老師に教えを乞い己の本分と天命とを見定めんと励みおり候 
来る正月老師のお許しあらば三十三間堂の射会に参じたく御父上の御上洛これあらば望外の喜びと存じ候 
小生京にある間いささか詩文に長じ候えば御父上に一編献じ奉り候」
 その詩があの軸。

 雨にもまけず
 風にもまけず
 雪にも夏の暑さにもまけぬ
 丈夫な茶杓をもち
 釜ひとつあれば欲はなく
 自慢せず
 いつも静かに茶筅を振っている
 一日に粗茶一服と
 干菓子と少しの饅頭を食べ
 師の教えを
 だって違うだろうと言わずに
 よく見聞きしわかり
 そして忘れず
 野原の松の林の蔭の
 小さな萱ぶきの小間にいて
 東に茶会あれば、
 行って下足を取り
 西にボテ箱運ぶ人あれば、
 行ってその荷を負い
 南に点前に緊張する人あれば、
 行ってこわがらなくてもいいといい
 北にイジメや嫌がらせがあれば、
 つまらないからやめろといい
 日照りのときは灰のアクを抜き
 寒さの冬は藪で竹を伐り
 みんなに変人と呼ばれ
 疎まれても
 おもねらず
 ひとたび正客となれば趣向を盛り上げ
 次客となれば聞き上手となり
 詰めとなれば気がよく働き
 亭主となれば命を賭して誠を尽くす
 そういう茶人に
 わたしは
 なりたい

感想:とても良かった。ドラマ化希望!どっちの茶杓も遊馬は盗んでいないが、まあ人徳の分仕方が無い。
 彼、売ろうとしたし。鶴了さんも奈彌子さんも全体の事を思うと、駆け落ちと言う事はどうしても出来ないのね。
 弟の行馬、実に出来が良すぎるほど良いが、運動神経無いし、あの頭の良さは宗家巴流向け。
 遊馬は不器用な分、武骨で、剣道も弓道も好きだし、やっぱり坂東巴流は遊馬の方が向いてるね。
 遊馬が点てる茶はおいしいみたいだし。
 京都の人間と言うと嫌らしい感じがして嫌なのだが、
この話に出て来る人達は志乃を初めとして感じが良い人が多い。
 なかには嫌らしい人もいるが。これ読むとお茶とかやりたくなるが、お茶、金かかるし、無理。
 しかし最後の話は哀しかったです。自分の幸福は自分を想ってくれる人の幸福。
 気持はわかるけど、踏ん張って欲しかった…。
 岩手県民としては、石川啄木と宮澤賢治の活躍は嬉しかったです。
 閑坐 静かに座りなさい 喫茶去(きっさこ)まぁ、一服どうぞ

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銀色の覇者

「銀輪の覇者」斎藤純

最後まで書いています、注意!

 「大日本サイクルレース」賞金が出る。
 東京オリンピックをやろうかと言う時代で、自転車はアマチュアの方が推奨されていたが。
 明善寺恒章は明宝ミルクチームの主将だ。彼は大会運営委員と締め切りをめぐってもめている男を助けた。
 男が送った書類が行き違いがあったのかうまく受理されていなかったと主張していたから。
 男は響木健吾と言う名だった。

 響木は個人参加の先頭集団にいた。トップは越前屋平吉と言う男。
 響木の後ろをピッタリくっついて走っていた男は小松丈治。
 そして、自転車の不正改造を直すために遅れてきたドイツチームの後ろを、
やはり直しのために遅れた望月重治と言う男がピッタリくっついてきて、個人のトップ集団に追い付く。
 響木はトップをひっぱる形になった越前屋を助けて今日の一位にし、彼を一位にするため小松を妨害したので、小松を二位につけさせた。
 そして響木は二人にチームにならないかと誘う。望月もその話を聞きつけ、チームに無理矢理入る。

 実はこのレースの開催は危うい物だった。
 スポンサーの中条が、アマチュアの方を奨励する団体に言われて、スポンサーを降りようとしたのだ。
 日本女子大学校自転車部主将の娘のスギ子は父を説得すると言ったが。
 彼女はレースに参加したがったが、女子の参加は禁止されていた。

 響木は紙芝居屋をやっていた。
 捻挫で道端にうずくまっていた男の子を助けたら、その子の父はこの辺りの顔役だった。
 彼は家庭教師をする事になる。

 このレースの取材をしているフランス人のジャンは呼び出された先で暴行を受ける。
 彼を助けたのはお巡りさんを呼ぶ女の声だった。

 響木はパリでチェロを習っていた。
 そしてフランス人の女性と親しくなり、その娘の叔父が雇った男に指を折られ、チェロを弾けなくなる。

 レースを開催しようとしていた山川正一を助けたのは陸軍の特務機関だった。
 軍が使うかもしれない自転車の実験としてレースの開催を助けるとの事。

 娘は自殺し、日本にいる父親は共同で新事業にあったていた会社に裏切られて倒れた。
 響木は自転車ロードレースで金を稼いで、日本に帰った。
 父を裏切った帝国物産の明善寺泰造への復讐の思いを持ちながら。

 ジャンを助けたのは女である事を隠してレースに参加していたスギ子だった。
 ジャンは彼女が女性である事は他のチームにばれていて、いざとなればその事を訴えて、
チームを失格させる気だと忠告する。
 彼女は参加をあきらめ、ジャンの助手として働く事にする。
 彼女はついでにジャンから聞いていた明宝チームの不正改造の事を明善寺に忠告する。

 越前屋には探られると困る過去があった。小松も望月も言っている通りの人間では無いらしい。
 響木は記者の箱石に自分の本名を話す。悠木達治と言った。
 彼に自分と中山道の顔役である門脇との関係を誤解されないためだ。
 門脇はレースに対して賭博をやっているみたいだが、響木には関係ない事だった。

 九日目、ドイツチームが急に今日の成績で賭けをしないかと言ってくる。越前屋は逃げる気だった。
 箱石はレースの中止を知る。陸軍はこのレースで使われている自転車を採用しない事に決めたのだ。
 ドイツチームはその事を知っていた。越前屋はそれを聞いて、途中で逃げ出すを止めて、響木の前を走る。
 響木は明善寺にもレースの中止を伝える。明善寺は響木の事を探偵に調べさせ、父親との事を知っていた。
 明善寺は走れなくなり、チームの要の村里を響木に付ける。響木がドイツチームを抜く。越前屋が倒れる。
 響木は一位でゴールする。

感想:面白かったです。
 ツール・ド・フランスは何日もかけてするレースですが、ヨーロッパではとても人気がありますね。
 私が見ても面白いかどうかわかりませんが、日本にも戦前にはそんなレースがあったんですね。
 オリンピックで自転車を見ると、まるで機械みたいにぐるぐる綺麗にチームが回って、時々前後を取り換えて、
見ていて面白かったです。
 渡り鳥も同じですが、前を行くのは空気抵抗があって苦しいから、時々取り換えるんですよね。
 これを読むと自転車レースが見たくなります。
 色々な思惑でこのレースに参加している響木チームの面々ですが、結局そんなのは関係なくなって、
ただただレースのためになるのが感動的でした。
 ただ、後で戦争が待っているから、その後の事を書くと、苦くなってしまうのは仕方が無いですね。
 自転車って、何か夢がありますよね。

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荊の城

「荊の城」
サラ・ウォーターズ

最後まで書いています。どんでん返しが素晴らしいので、知らないで読んだ方が幸せです。

 スーザン・トリンダーの母親は強盗に入った先で人殺しをして、絞首刑にされていた。
 行き場の無い赤ん坊の世話をし、斡旋する事で生計を立てているサクスビー夫人が育ててくれた。
 父親代わりはイッブス親方。故買屋をやっている。

 そこに通称紳士(下町なまりでジェマン)と言われる男が現れ、仕事の依頼をする。ある相続人の娘がいる。
 両親はいず、伯父と暮らしている。彼女は結婚しないと遺産がもらえない。
 で、そのお嬢様の侍女がいなくなったので、スウ(スーザン)に侍女をやってもらいたい。
 ジェマンがお嬢様と接触しやすいように。
 そしてジェマンは彼女と結婚、結婚した後、彼女を気狂い病院に入れる。その手助けをスウにして欲しいのだ。 皆の期待もあり、スーザンは引き受ける。

 そのお嬢様モードは優しかった。スーザンは彼女を好きになり、彼女のために色々と気遣いする。
 ジェマンはモードにモーションをかけるが、お嬢様は彼の事を好いてはいない感じだった。
 しかし厳格な伯父の下での城での生活は息苦しい物で、彼女がそこから出るには結婚しかない。
 モードは結婚を決意するが、スーザンに結婚した夜に花嫁がする事を聞いてくる。
 スーザンは教えるつもりで、キスしたが、その後夢中になり、それ以上の事をしてしまった。
 しかしモードとジェマンの結婚は行われ、気狂い病院の人が来、スーザンはモードに付き添う。
 しかし、気狂い病院に入れられたのは、スーザンの方だった。

 モードは気狂い病院で、皆に可愛がられて育った。母は気狂い病院で彼女を生み、そこで死んだのだ。
 しかし伯父が現れ、彼女を城に連れ帰った。彼女の書く字が気に入ったのだ。
 伯父は春本を収集整理し、研究していた。彼女はその手伝いをした。
 そこにリチャード・リヴァース(ジェマン)が現れる。
 彼はその手の本をフランス語から英語に訳す仕事をしていて、その関係で来たのだ。
 リチャードは彼女に綿密な下調べをしてここに来た事を告白、自分の事を悪党だと言う。
 彼は計画を話す、彼は金を得、彼女は自由になる計画を。
 リチャードは絵も描く事が出来、伯父の版画整理の手伝いをした。スーザンが現れる。
 スーザンと接しているうちに、彼女を好きになる。しかし、計画は遂行。
 ロンドンに連れてこられ、彼女はサクスビー夫人の家に連れ帰られる。
 実は女相続人は本当はスーザンの方だった。
 スーザンの母親は妻子ある男の子供を身ごもり、サクスビー夫人の家でスーザンを生んだ。
 貴婦人と言う物につくづく嫌気がさしていた女は、自分の娘を普通の庶民の娘として育ててもらい、
代わりに他の子を自分の子供とする事にした。
 そして女は娘が18になった時に真実を教え、
財産を娘と身代わりの娘二人に分けると言う正式な書類を書いて、それをサクスビー夫人に渡して、
家族に連れられて行った。
 モードは一度は逃げたが、自分の居場所がそこしかないと知る。
 帰って来たモードに、サクスビー夫人は新たな真実を話す。

 気狂い病院のスーザンに人が会いにきた。城で働いたチャールズだった。
 チャールズはリヴァース様を好きで、彼に雇ってもらうために来たのだ。
 お嬢様がここにいると聞いて会いに来たのだが、いたのはスーザンだった。
 スーザンはチャールズに合鍵作りの道具を用意させ、気狂い病院を脱出する。
 そしてロンドンに帰り、サクスビー夫人の家にモードがいる事を知る。
 スーザンはナイフを持って、チャールズを連れて、家に乗り込む。そこにジェマンが帰ってくる。
 財産はまだ受け取れていなかった。ジェマンはモードとサクスビー夫人の真実の関係を察知する。
 彼の一言で、スーザンが動くより先に、サクスビー夫人とモードが動き、
ジェマンはスーザンが持ってきて置いたナイフで刺されて死ぬ。
 一緒に暮らしていた、元赤ん坊として世話を受けたジョンが、刺したのはサクスビー夫人だと言い、
彼女もそれを認める。
 彼女は絞首刑にかけられる。スーザンは彼女の遺品の中から手紙を見つけ、字を読める人に読んでもらう。
 そして自分こそ女相続人で、モードがサクスビー夫人の娘である事を知る。
 自分を本当に陥れたのは自分が母と慕っていたサクスビー夫人だった。
 スーザンはモードが自分を守ろうとしていた事に気づき、彼女を探す決意をする。

 手始めに城に行くスーザン。伯父は死んで、使用人のほとんどが止めていた。
 モードはそこに居、春本を書いて生計を立てていた。二人はお互いの気持ちを確かめる。

感想:あれ、前の「半身」も、女同士が怪しい関係になったような…。もしかして、この方…。まあ、構わないけど。 雰囲気がとても良くて、このままダーク・ファンタジーに突入してくれないかと思ったが、
このミスの1位なんだから、その期待が叶えられることはない。
 ミステリーよりダーク・ファンタジーが好きなんだが…。
 ミステリーではいつもそうなのですが(他のでもそうだが)、先を知りたくなる衝動を抑えるのに苦労しました。
 先を知りたくなったら、ひたすら今読んでる所の先を読む。
 ウィリアム・アイリッシュの幻の女を読んだ時は、ええ、犯人誰か、読んじゃいました。
 まあ、そのおかげで、裏読みしながら、安心しながら読めましたが、やんなきゃ良かったと後悔しました。
 どんでん返しがある作品ですもんね、ネタを知るのは良くないでしょう。

他の方のブログを読んでの感想:うん、あの時代の雰囲気が好き。
 SF,ファンタジーファンだから、ミステリーよりその世界が現出する方が大事。とても楽しませてもらった。
 このお話、ドラマ化されてWOWWOWでやったらしい。私はお金が無いのでとても入れんが。ぜひ見たいな。
 英国製ドラマは好き。
 ルパート・エヴァンズがジェマンをやってるそうだが、彼はジェマンの事同性愛者じゃないかと言う。そうかもね。 女性達への彼の対応がなんとなくそう。生きにくいからああなったとも考えられる。

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くらやみの速さはどれくらい

「くらやみの速さはどれくらい」エリザベス・ムーン ☆☆☆☆☆

最後まで書いています、かなり簡略ですが…、注意!

 ルウ・アレンデイルは自閉症だった。
 治療により、何とか日常生活を営めるのだが、まだまだノーマルのようにはいかない。
 彼は自閉症の最後の世代で、今は幼児の時に治療を受ければ自閉症は治ってしまう。
 彼はパターン分析が得意で、それを仕事としていた。彼の働く部の人間は全員自閉症だった。
 その部に新しい上司クレンショウが来る。
 彼は自閉症のための、トランポリン等があるジムとか、キラキラ光るモールとか、
音楽とかが無駄な経費と考えていた。
 それにパターン分析の仕事はコンピューターにまかせられるとも。
 彼は自閉症の従業員達に社の発明による自閉症を治す治療を受けるよう勧める。
 それはまだ試験状態のものだったが、彼はそれを受けなければ会社を辞めさせる事を暗に匂わせていた。
 その治療について色々と勉強するルウ。
 クレンショウがやろうとした事は明らかに法律違反だったので、彼は左遷され、
治療を受ける事は白紙に戻った。
 しかしルウは治療を受ける事にする。何かと人に頼らざるをえない自分がイヤだったのだ。
 彼は新しい自分に生まれ変わる。以前好きだったマージョリに会っても、何とも思わなくなっていたが…。
 ルウは天体物理学を学び、今宇宙にいる。

感想:21世紀版「アルジャーノンに花束を」と帯には書いていたけれど、こういう宣伝は私はイヤ。
 つまりその本よりは面白くないのねと思っちゃうから。
 私自身は「アルジャーノンに花束を」にはさほど感動しなかった。でも、これは素晴らしい。
 あの作品のように泣ける作品というわけではないが、新しい視点、世界が見えるから。
 エリザベス・ムーンには自閉症の息子がいるそうだが、彼女自身は自閉症ではない。
 私は自閉症者が書いた本を読んだ事が無いので、本当に彼らの世界がこんな世界なのかはわからない。
 でも、ドキュメンタリーで見た時はそれなりに魅力的な世界に住んでいるなと思った。
 まあ、自閉症と言っても、人それぞれだから、いっぱひとからげにくくっちゃいけないと思うが。
 ここに描かれた自閉症者の世界は、問題はあるんだろうけど、魅力的だ。
 必要な事しかしゃべらなくても平気な彼ら。暗喩とか形式的な言葉を不思議に思う所。
 人の悪意を感じていながら、よくわからない所。素数とかへのこだわり。
 いや、他にもあるんだけれど、もう忘れちゃった、早いぞ自分。
 でも緊張した状態の人とのコミュニケーション能力が低いのね。まあ、普通の人でも低い人はいるが。
 このまえ、アメリカの空港で、不審な人物を人間の経験で見つけ出し、尋問すると言うのをやっていたけれど、
この話でもあるように自閉症の人って、不審と言う事で詰問されちゃう事って良くあるのかな。
 大変だな。
 暴力事件ってどちらかというとノーマルの方が圧倒的に多いんだろうけど、
時々(この前も…)自閉症の人かなと思われる事件があって、ただでさえ、
日本ではこういう障害の理解が足りないから、困ってしまう。
 何でも、刑務所には、自閉症とかではないだろうけれど、色々と境界線の人達が入っていて、
受け入れ先が無いから、結局又犯罪を起こして入ってくるとか…。
 アメリカでもホームレスの中には、精神障害の人達がいると聞くし…。どうすれば良いのかな。
 まず知らないとね。
 テレビでアスペルガーとか知能の状態がノーマルと変わらない人達は、
性格が悪いといじめられがちで大変だと言うのを見たけれど、確かに知らなければ性格悪いと受け取りそうで、
色んな事を知れば知るほど、簡単に人を判断できなくなる。

関連サイト
すみ&にえ「ほんやく本のススメ」

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「イリヤの空、UFOの夏」1~3

「イリヤの空、UFOの夏」1~3 秋山瑞人 ☆☆☆☆

最後まで書いています。注意!

「第三種接近遭遇」浅羽直之は夏休み中、新聞部の部長水前寺邦博と、UFO探しのため山にこもっていた。そこで夏休み最後の日は、学校のプールに忍び込んで泳いでやろうと決めたのだ。しかし夜のプールには先客がいた。女の子だった。彼女は自分の名前を「いりや」と告げた。泳ぎ方を知らない彼女に泳ぎを教える浅羽直之。パトカーのサイレンの音がすぐ近くで響き、男が現れ彼女を連れて行った。
そしてあの女の子「伊里野加奈」が浅羽直之のクラスに転校してくる。

「ラブレター」水前寺邦博は園原基地の立ち入り禁止区域にUFOの残骸か宇宙人の死体があるのではないかと疑っていた。伊里野加奈が園原基地の居住区に住んでいると聞き、伊里野加奈を入部させようと、浅羽直之のクラスに行き、花束を差し出し誘う。浅羽も勧誘してみる。
防空訓練の日。いつもなら予告があるのに、予告無しに第一次空襲警報が鳴る。そう言えば中村先生が「今回のテーマはリアリズム」とか言っていた。それゆえだと浅羽は思ったのだが、伊里野加奈は本物の恐怖の表情を浮かべていた。伊里野は浅羽の手を掴んで走った。廊下に居並ぶ生徒達を見て死にたくなかったら自分の後に続けと叫んだ。防空壕のロックを解除し、中に入って閉めた。そして電話が鳴った。電話の相手は榎本と名乗った。プールで会った男らしい。警報はやはり訓練だった。防空壕を開けるにはしばらく時間がかかる。何もする事が無いので伊里野のゲームを貸してもらってする浅羽。浅羽の背後から夢中になって教える伊里野。浅羽の背中に押付けられる伊里野の胸と声にゲームどころではない浅羽。浅羽の飛行機は敵にやられ、伊里野は鼻血を出して意識を失った。電話をする浅羽。榎本は伊里野の胸をはだけ、そこに印があるから、印の所に注射器を突き刺せと言う。突き刺そうとした時、防空壕が開き、新任の保険医椎名真由美が浅羽の代わりに突き刺してくれた。
下駄箱にピンクの封筒が入っていた。伊里野の入部届けだった。入部を希望した理由には「浅羽がいるから」と書いてあった。

「正しい原チャリの盗み方」前編 
水前寺は伊里野に園原基地を見せてくれないかと頼んだが断られた。そこで水前寺は浅羽に伊里野とデートする事を命じる。好きな男に頼まれれば無碍には断れまいと言う理由だ。無理と断る浅羽だが、では俺がやると言う水前寺の言葉を聞き、「わかりましたやりますっ!!」と叫んでいた。浅羽は伊里野を映画に誘った。
浅羽と伊里野のデートを影から見守る榎本と椎名真由美。しかし浅羽には別の尾行がついていた。妹の夕子だった。そして兄達が入った映画館に入ろうとして水前寺と出会う。水前寺は浅羽に盗聴器を仕掛けていた。榎本達も水前寺の盗聴器から電波を盗み聞きさせてもらう。トイレに行き戻ってきた水前寺が座る場所を変えた。榎本は水前寺に気づかれた事に気づき、出る事にする。水前寺は仕掛ける。悲鳴を上げる椎名真由美。目標の男女を写真に撮る水前寺。

「番外編・そんなことだから」椎名真由美が電話を取ると榎本からだった。26チャンネルを見ろとの事。UFO特番だった。番組のFAXが届く。園原基地南第二ゲートに武装車両に護衛された大型トレーラーがあり、積荷は異星人の冷凍死体四体との事。慌てる榎本。「積み荷が何かなんてどうせ水前寺だって死りゃあしねえ、取材スタッフをぶつけて何が出てくるか確かめる腹だ!!」榎本、忙しくなると電話を切る。取材スタッフが出向き、積み荷を開けると…、ダッチワイフだった…。

「正しい原チャリの盗み方」後編
ここはファーストフード店。伊里野に盗聴器の事がばれる。伊里野は浅羽に仕掛けられた盗聴器を全部処分する。ばれた事を知り、嫌がる夕子を脇に抱え、伊里野達の元へ向かう水前寺。伊里野は消化剤の仕掛けを施しておいて、原チャリを盗んで浅羽を後ろに乗せて逃亡する。夕子を無理矢理後ろに乗せ、自分のスクーターで追いかける水前寺。行く手に野良犬。伊里野は無謀な急カーブを切る。水前寺は曲がりきれず、そのまま川へ…。伊里野は逃げて着いた先の公園で昔の思い出を語る。

「十八時四十七分三十二秒」前編
「旭日祭」こと学園祭がもうすぐ行われる。水前寺はUFO現象についての調査報告並びに展示を行うつもりだ。もう一人の部員須藤晶穂は特別号を発行する事にした。旭日祭の企画紹介である。浅羽はもし伊里野が学園祭に参加できたら、伊里野とフォークダンスを一緒に踊ってくれと榎本から頼まれる。

「十八時四十七分三十二秒」後編
旭日祭。浅羽は校内放送で伊里野から電話だと呼び出される。十八時四十五分に六番山に一人で来てくれ。六番山に向かう浅羽。遥か上空に航空機の編隊。一機がこちらに機首を向けた。低空を通過しフレアをばら撒く。

「番外編・死体を洗え」陸上自衛軍女子寮隊員寮「ひめゆり荘」の電話。基地の外で男にナンパされ、その男が話した変な話。園原基地で死体を洗うバイトをした。バイトに誘ってくれた奴はその仕事にすっかり気がおかしくなり、「エイリアンがいる!!エイリアンの死体あがある!!」と絶対に出るなと言われていた処理室を出る。そこにあった水槽を見下ろしていた奴の振り返った顔は無表情で…。そんなバイトがあるわけが無いと電話の相手。突然のノイズ。別人の声のような…。電話が切れる。

「無銭飲食列伝」伊里野をおいしいお店紹介の取材に誘う晶穂、一緒にストロベリー・フィールズと言うお店に行く。「あっ、えっと、オレンジペコといちごパフェ」「晶穂とおなじのっ」伊里野は機械のようにパフェを食った。今さら後には引けず、絶対に怯んではならZu,一歩たりとも譲ってはならず、晶穂もパフェを平らげる。「げんこつシュークリームと水出しコーヒー。あとスパゲッティ・マヨネーズしょうゆ」「晶穂と同じの」ロボットのように食い始める伊里野。晶穂もあわてて食べ始めるが、伊里野が先にフォークを置いた。晶穂を真っ直ぐ見つめる伊里野。「鉄人屋」に行く二人。「鉄人定食ひとつ」「晶穂と同じの」「-いや、あのねお客さん。一応説明しとくとさ、うちの鉄定は」「鉄人定食ひとつ!」「晶穂と同じの!」鉄人定食とは、鉄人ラーメン+鉄人餃子+鉄人中華丼のセットで、お値段4千円、ただし完食されたらお代は結構、制限時間は60分。まず巨大ドンブリのラーメン。ストップウォッチが15分を経過した頃、二人スープを飲み干し始める。完食。三口でも食べきれない餃子五つ。熱い餃子を手づかみで口に放り込む。絶対に負けたくない。無理矢理飲み下す。ニワトリの卵がゴロゴロ入った中華丼、器は洗面器の如し。残り時間は二十八分と十七秒。伊里野が食べている最中に鼻血を出す。「…まけない。あきほには、ぜったいまけない。ぜったいまけない!」「上等ぉっ!!」晶穂の意識は何度も途切れた。食い終わり、伊里野の椅子の足を蹴りつけ、伊里野の体が傾き、その下から空っぽの器が現れた。記憶が途切れた。晶穂と伊里野は仲良くなる。

「水前寺応答せよ」前編 晶穂が誘って浅羽や伊里野や他の友達とボーリングに行く。しかし、そこに榎本が現れ、伊里野を殴って無理矢理連れて行く。次の日、伊里野の髪は真っ白になっていた。電話で呼び出され、すぐ帰る伊里野。

「水前寺応答せよ」後編 水前寺はかつての自分の家の土地だった所の地下壕に身を潜めていた。園原基地に潜入するためである。そしてついに見た。部室で水前寺の暗号に気づく浅羽。今日の午後九時までに帰還するとの事。電話がかかってくる。「あれは生物だ」電話の向こうで何かが起こり、水前寺の叫び声が聞こえ、回線は断ち切られる。伊里野に逃げようと言う浅羽。しかし浅羽には電波を発する物が仕掛けられていて、逃げられないと伊里野。浅羽は耳の下に埋め込まれていた金属を抉り取る。

番外編「ESPの冬」水前寺と浅羽は放送室を占拠し、ESP実験を行う。

感想:あまりハッピーエンドでは無いと聞きました。という事は伊里野は…。私としては愛しの水前寺が気にかかります。浅羽の妹はなかなかに可愛い。晶穂はいい子よね。この世界の日本は北と南に分かれているらしいな。そして、宇宙人も関係しているが、一般人はそれを知らない。とっても笑えるお話しなんだけど、きつくもあるのよね。

ちっちゃん俳句「夕焼けや 中止されたし 周りなり」

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永遠の王

「永遠の王 アーサーの書 The Once and Future King」T.H.ホワイト(T.H.White)1939,1940,1958 ☆☆☆☆
第一部 石にさした剣 第二部 風と闇の女王 第三部 悲運の騎士 第四部 風のなかの灯

最後まで書いています。

 ウォートとケイの教育係の様子がおかしいので、ケイの父サー・エクターは彼女を辞めさせたのだが、
次の教育係が見つからない。
 ある日ウォートが鷹狩を提案し、ケイもその気になるが、肝心の鷹が羽の抜け変わっている最中で、
それでも無理に連れて行ったのだが、鷹は獲物を逃がし、すね、ケイの元には戻らず、
高い木の枝に留まってしまった。
 ケイは怒って帰ったが、ウォートは残って鷹を追いかけた。しかし鷹を見失い、迷子になってしまう。
 クエステイング・ビーストを追う騎士ペリノア王に会う。
 彼とは別れるが、森の奥でアルキメデスと言うふくろうを飼うマーリンに出会った。
 マーリンが教育係になってくれた。ウォートはマーリンに時々動物に変身させてもらい、色々な事を学ぶ。
 やがてマーリンは去っていってしまい、ケイは騎士になり、
ウォートは彼の従者としてロンドンの大武術大会に行く。
 国王が死に、教会の外に石に刺さった剣が現れ、石から剣を引き抜く者こそ王だと剣が言い、
武術大会は石から剣を引き抜く者を見つけるための大会だった。
 ケイはいざ試合と言う時武器を忘れた事に気づき、ウォートに取りに行かせる。
 しかし宿屋はしまっていて、ウォートが途方にくれて馬を歩かせていたら、石の上にかなとこがあり、
剣がそれを貫いていた。
 ウォートは剣を引き抜く。ウォートは実は国王の息子で、彼は王アーサーとなる。

 アーサーの時代の戦争とは身分の高い者は鎧で身を固め、ほとんど死なず、
身代金と引き換えに捕虜から解放されるものだった。
 死ぬのは歩兵達。
 マーリンにその事を教えられ、アーサーは身代金目的ではない戦いをし、騎士団を作り、
上座をめぐった争いが起こらないように円卓を考える。

 フランス人の少年ランスロットはアーサー王に恋をしていた。
 アーサーから騎士団の話を聞き、誘われて感激したのだ。彼はそのためにひたすら己を鍛えていた。
 将来はシュヴァリエ・マル・フェ-醜き騎士と名乗るつもりだった。彼はとても醜かった。
 18になり、彼はアーサーの元に赴く。アーサーは一羽のシロハヤブサを彼にプレゼントした。
 そして妻のグェネヴィアに若いランスロットに親切にしてやってくれと頼んだ。
 グェネヴィアはランスロットの鷹狩の手伝いをした。
 ある日彼女は不機嫌なランスロットにおびえ、紐をでたらめに巻いてしまい、
ランスロットに「そんなんじゃだめです」と言われて、傷つく。
 その時ランスロットは初めてグェネヴィアを同じ年頃の生身の人間として意識したのだった。二人は恋に落ちる。 ランスロットはある日魔法にかけられた乙女エレインを助ける。
 エレインはランスロットに恋し、媚薬を使って彼と契りを結ぶ。
 しかしランスロットは純潔でなければ、奇跡は起こせないと信じていて、ショックを受ける。
 彼は慰めを求めてまっすぐにグェネヴィアの元に向かう。

 アーサーは円卓の騎士達が戦う理由が無くなり、堕落し始めているのを見て、聖杯探求を騎士達にさせる。
 ランスロットが帰って来、報告する。
 ランスロットの息子、今や世界一の騎士、童貞でもあるガラハッドと、ペリノア王の息子、優しく、
やはり童貞のパーシヴァル、そして童貞ではないが、第一級の神学者のボースが聖杯探求に成功し、
ボースは帰ってくるが、後の二人はそのまま神の世界に行ったのだった。

 オークニー一族のアグラヴェインは自分の打ち負かしたランスロットを憎み、
アーサーの息子モードレッドは父が自分にした行いを恨んでいた。
 二人はついにランスロットとグェネヴィアの不貞の場を押さえ、
ランスロットはモードレッド以外のランスロット達を捕まえに来た騎士達を殺して逃げ、
グェネヴィアは捕らえられる。
 アーサーは法を重んじ、ランスロットがグェネヴィアを助けに来る事を期待しながら、
彼女を火刑にかけようとする。
 ランスロットはグェネヴィアを助けに来るが、
そのさい武装していなかったガレスとガエリスをそれと気づかずに殺してしまう。
 彼らの長兄のガウェインは激怒し、アーサーもランスロットと戦わざるを得なくなる。
 彼らが留守をしている間にモードレッドはアーサーを死んだことにし、グェネヴィアに結婚をせまる。
 彼女は隙を見て、アーサーに手紙を出す。ガウェインが死ぬ間際に現状をランスロットに知らせる。
 王の気力はくじけていた。彼は人の性の善なるを信じ、悪戦苦闘したが、今や戦争に直面している。
 彼やモードレッドが国を不幸に導いたのだとは感じられなかった。戦争はどこから始まるのだ?
 所有するからいけないのか。しかしこのような神の視点には彼はうなずけなかった。
 誰にも従うことが出来ない忠告は忠告とは言えない。
 アーサーは11月で13になる小姓のトマスを呼び、彼に戦闘には参加せずに生き延び、
アーサーらの素晴らしい思い付きを覚えていて欲しいと言う。
 アーサーは死ぬだろう。ランスロットとグェネヴィアは出家し、モードレッドは命を落とす。
 王は未来を迎えに、安らかな心ですっくと立った。

感想:この頃は引っかかった物しか書かない私です。記事が無駄に長いし…。
 この物語はユーモアがあり、視点、切り取り方が面白く、
現代の視点をマーリンが逆に生きているという設定で活かし、底に全ての登場人物に対する優しい見方があり、それはおそらく作者が優しい人と思われ…。
 ホワイトは1906年5月29日、植民地インドの警察地方警視の一人っ子としてボンベイに生まれました。
 5歳からイングランドに住む母方の祖父母に預けられる。
 背が高く、ハンサムで、きらきら輝く青い目をして、深みのある静かな声と、ドラマチックな話術を備え、
ユーモアに富み、弱いものに優しく、孤独で、激しい感情に動かされやすく、不安に怯え、好奇心旺盛で、
活動的で、優れた記憶力を持ち、きびしく真摯な教師であり、アルコールに溺れる傾向があり、サディストで、
寛大で、不幸せで、友人達に誠実で、下層の人々や子供達慕われる。
 30の時、森の中の小さな家を借りて一人で住み、多くの動物を飼っていた。
 サー・エクターがケイが嘘をついた時、それをせめず、目と目の間をまっすぐに見据え、
「おまえはわしの自慢の子だよ。おまえがなにをしようとも、いつでもそれは変わらないんだ。
その剣をおまえ自身の力で抜いたと、わしに誓っていえるかね」と言う所は感動しました。
 なかなかこうは出来ないな。ペリノア王とクエスティング・ビーストも大好きです。
 クエステイング・ビーストに恋されてしまうサラセン人の騎士サー・パロミデスも。
 母親の愛を得られず、苦悩する可哀想なモーゴースの子供達。いろいろな事に悪戦苦闘するランスロット。
 そして全体の事を考え、最善を尽くしたのに、理想の終わりを目にしてしまうアーサー。
 モードレッドだって可哀想な子供だけど。アーサーがした事は確かに悪いし。

 関連サイト
Leon’s Armor Shop
ディズニー総研

ちっちゃん俳句「今一つ 移動するのは 物語」
「オンライン 激情したら 可哀想」

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グロテスク

「グロテスク」桐野夏生 ☆☆☆☆☆

最後まで書いています。

第一章 子供想像図 
 わたしは男の人を見るたびに、この人とわたしが子供を作ったら、いったいどんな子供が生まれてくるのだろう、とつい想像してしまいます。
 私の父はポーランド系スイス人、母は日本人です。
 わたしは東洋系の顔ですが、妹は怪物的な美貌で、日本でも外国でも驚嘆の見られました。
 父も母も美しくはありません。ユリコは売春婦として殺されました。
 そしてわたしの同級生佐藤和恵もユリコを殺した人間に殺されたらしいです。
 和恵は昼間は堅い会社に勤め、夜は売春してたのでした。
 わたしはユリコを嫌いで、子供の時、寒い中、山小屋の外に置き去りにしたこともあります。
 ユリコは近所のジョンソン夫婦の山荘に泊まりました。ジョンソンはジュード・ロウ似のハンサムでした。
 父は事業に失敗し、スイスに母とユリコを連れて帰りました。私は母方の祖父の家に置いてもらいました。

第二章 裸子植物群
 わたしはQ女子高に入りまいした。
 そこは初等部、中等部、高等部、大学と一貫教育で、初等部からの人間は豊か家の子ばかりで、
彼らはサラリーマンの子を仲間に入れませんでした。
 就職するのは恥。彼ら主流に入るにはものすごく綺麗でなければなりません。
 和恵は高等部から入った人間で、美しくなければ入れないチアガール部に入ろうとして、
すったもんだしたあげく、やはりお金がかかるアイススケート部に入りました。
 ミツルは中等部からの人間で、学年トップでした。私はミツルと親しくなりました。
 母が自殺し、ユリコが日本に帰ってくる事になりました。
 父親は弟の会社に勤めていましたが、そこの若いトルコ人をはらませていました。
 わたしはユリコと暮らす事を拒絶しました。和恵が自分の誕生日にわたしを家に誘いました。
 和恵は本当は学年トップのミツルを誘いたかったのですが、彼女はもう帰っていました。
 和恵の父親は威張りくさり、吝嗇家で、わたしに和恵と付き合うなと云いました。
 ユリコはジョンソン夫婦の家に住む事になり、Q女子高にうかりました。現代。
 私はジョンソンと別れたマサミさんからユリコの手記を預かりました。

第三章 生まれついての娼婦-<ユリコの手記>
 私は子供の時からジョンソンと危うい関係だった。しかし私の最初の男は叔父のカールだった。
 日本に帰り、ジョンソンの家で暮らすことになり、マサミの意向でQ学園中等部の帰国女子枠を受験する。
 私の試験の成績は悪かったが、生物の木島に気に入られて、入る。私はチアガール部から誘いを受ける。
 そして木島の息子に出会い、彼は私の売春のマネージャーになる。
 私の学校での商売は姉に密告されて、私は学校を中退する。ジョンソンとの情事もマサミにばれる。
 私は年を取るにつれて醜くなり、街に立って売春するようになる。同じように街に立っていた佐藤和恵に出会う。 私にはジョンソンとの間に息子がいる。息子はジョンソンが育てている。私には息子は要らない。

第四章 愛なき世界
 Q女子高。わたしは和恵から相談されました。ユリコといつも一緒にいる木島高志を好きだと言うのです。
 わたしは彼女の恋情をあおり、彼女は痛々しいくらいお洒落をしました。
 わたしは彼女が痩せたらもっとみっともなくなると思い、少し体重を絞った方が良いと言ってやりました。
 わたしの祖父はミツルの母親とつきあい、それがきっかけでわたしはミツルと絶交する事になりました。
 和恵はわたしのアドバイスどおり、木島にラブレターを書き、
わたしはその手紙が和恵の父親に渡るようにしました。

第五章 私のやった悪いこと-<張(チャン)の上申書>
 私、張哲鐘は四川省の山の中に生まれた。
 私の家は客家で、村の連中に家を建てる事を許されず、洞窟住まいを余儀なくされた。
 妹の美君に縁談が来た。妹は兄弟も見惚れるほど美人だった。
 私も美男な方で、日本ではよく「柏原崇」に似ていると言われた。
 妹は結納金を使って、一緒に広州に行こうと言う。
 列車はその手の人間で一杯で、トイレはいち早くやくざ達に取られ
、トイレを使うには金を払わねばならなかった。
 妹はそのやくざと行ってしまう。私は肉体労働をして働いた。
 ある日、妹が働いているはずのホテルに行くと妹はいず、代わりに私は中の客に呼ばれる。
 その女、露珍はスイートに住んでいて、私はその女の年下の恋人になる。
 ホテルのプールで私は娼婦をしている妹と再会する。露珍の金を取って、妹と逃げる。
 美君は日本に行く途中、船から落ちて水死する。私は平田百合子に出会い、殺してしまった。

第六章 発酵と腐敗
 わたしはチャンが書いた上申書の写しを読み、顔が良いという彼の顔を見るために、公判に行きました。
 ずんぐりとしてはげかかった、丸顔の団子鼻でした。わたしはそこでミツルに出会いました。
 彼女はある宗教団体に入信して幹部に上り詰め、その宗教団体がテロを起こし、服役しているはずでした。
 夫はおそらく極刑。
 ミツルの母親はわたしの祖父がボケたとわかったら、祖父を捨て、
その悔いの為にその宗教団体に入ったのでした。
 ミツルは木島先生と文通していて、その手紙をわたしに渡しました。
 わたしは手紙を返すために次の公判に行きました。そこで木島高志と出会いました。
 太った木島は美少年を連れていました。ユリコの息子の百合雄でした。
 ジョンソンはアメリカに帰りましたが、百合雄は日本に残ることにしたのでした。
 百合雄は生まれつき目が見えませんでした。
 百合雄はパソコンを欲しがり、わたしは買ってあげると言い、百合雄はわたしのところに来ました。
 ミツルが家にやってきて木島先生と結婚する事にしたと言いました。
 そして木島高志の元に届いたという和恵の日記を残していきました。

第七章 肉体地蔵-<和恵の日記>
 あたしは昼は年収一千万で最大手の建築会社で働きながら、夜は娼婦をしていた。
 一番の売れっ子が盗みをしていたと嘘のチクリをした事がばれ、あたしはホテトルを止めさせられ、
地蔵前に立った。
 そこにいた右のお乳がないマルボロ婆さんはあたしにその場所をゆずった。
 ユリコに出会い、あたしのいない間はこの場所を彼女に貸す事にする。チャンに出会う。売春する。
 ある日チャンがユリコの鎖をつけていた。殺してと言ったから殺したとチャン。
 妹も殺してと言ったので殺したそうだ。
 彼と一緒に暮らしていたドラゴンによるとチャンはジジイと兄貴、妹の婚約者を殺して、妹に娼婦をやらせ、
ヤクザと麻薬の取引をやっていたそうだ。
 アタシはチャンに3千円で春を売る。

最終章 彼方の滝音
 わたしは永遠の処女。祖父が死に、パソコンを買ってやらないわたしに百合雄が街に立ったら言う。
 円山町の地蔵前に二人で立つが、百合雄だけが売れていく。わたしの初めての客が現れる。

感想:このミス上位だから読んだんだけど、ホントはあまり読みたくはなかった。
 上位を読むと決めている私が悪いんだが…。
 アニメの感想を読むと鬱展開がイヤとか書いている方がいるけれど、これがホントの鬱話し。
 山岸涼子さんの短編に似てるけど、あそこまで突き放してはいないかな。皆、かなり醜いが…。
 やっぱわたしが一番醜いかな。
 まあ、確かに綺麗過ぎる妹を持つのはきついが、妹もそのせいで母に受け入れられず、結構きついのよね。
 やたらと騒がれるし…。でも醜くなっても結構さばさばしてる妹。ずっと顔にこだわる姉。
 ミツルもQ校でのいじめによって、人生が歪み、和恵となると悲惨極まりない。
 拒食症の醜いやせすぎの体、濃すぎる化粧、精神的に明らかにおかしい。
 わたしは百合雄を崇拝しているが、百合雄も結構あなどれない性格。
 彼は木島といた方が良かったんじゃないか、木島はホモだけど。木島の方がお金持ちだ。
 わたしもチャンもすごく嘘つき。しかし文章力があり、読ませます。
 女の書くきつい話は、本当にきつくて、がっくりきます。
 Q女子校のような学校、作者が取材したら、本当にあったとか…。
 ちょっと間違えたエリート意識ってホントにあるらしいし、信じられんが、エリート階級もそれなりに醜いな。
他の方の感想を読んで:やっぱこれ、良い作品。 他の方の感想が面白いから。
 いや何の感想も無くたって、面白い本は面白い本なんだが。
 総合職として一流企業で働きながら、売春しちゃうって、わからないでもない。
 頑張ったって駄目なものは駄目なんだけど、その理不尽さにがっくり来るだろう。
 売春って人とふかー~く関わる職業だしね。強迫観念は怖いな。
 最近一番の能力ってめげない能力なんじゃないかと思う。
 ユリコはセックスが好きと言ってるが、彼女だって両親からちゃんとした愛情がもらえず、
幼い頃から男達のその手の視線を感じて、歪んじゃったんだろう。
 彼女が一番悪意が少ない感じ。

関連サイト
On Off and Beyond
Straight Shooter
三太・ケンチク・日記
夜明けの曳航

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犬は勘定に入れません

「犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」コニー・ウィリス ☆☆☆☆☆

最後まで書いてます。注意!

 時は第二次大戦中のロンドン大空襲後。場所はそのせいで焼失したコヴェントリー大聖堂。
 そこにいるのはカラザーズ、新入生、僕ネッド・ヘンリー、ミスター・スピヴンズ(犬)、そして堂守。
 カラザーズ、新入生、そして僕は2057年の住人だ。タイムトラベルでここに来ている。
 「規則は破るためにある」、「神は細部に宿る」が信条のレイディ・シュラプネルのために。
 彼女は自分のひいひいひいひい祖母さんがコヴェントリー大聖堂の主教の鳥株(良く分らんが鳥が切り株に止まっているような形の鋳鉄製の花入れらしい…)を見て運命が変わったという話に感動し、
焼失したコヴェントリー大聖堂を再建しようと奮闘してい、特に主教の鳥株に固執していた。
 ネッドはここ一週間で12回ぐらい降下していた。どうしても主教の鳥株は見つからない。
 新入生は2057年には絶滅している猫を見て感激している。
 戻ってもレディ・シュラプネルに責め立てられ、ここに送り返されるだろう。
 ミスター・スピヴンズが足元にうずくまり、同情するように僕を見上げた。
 「力を貸せるものなら貸したいと思っているんだろ?きみたちが人間の最良の友と呼ばれてるのも当然だ。
忠実で誠実でたしかな存在。
人間の悲しみに共感し、勝利の喜びを分かち合うことのできる正真正銘の友、
人間にとっては分不相応なすばらしい友人。
戦場でも暖炉の前でも、終始変わらず人間と運命をともにし、
たとえ死と破壊に囲まれようと主人を見捨てることはない。
嗚呼、いと気高き犬よ、汝こそは、ありうべき人間の姿を映す鏡、よりよき人間を毛皮にくるみしもの、
戦争にも野心にも汚されず、富にも名声にも…」
 僕は無理矢理オックスフォードへ連れ戻され、付属病院に放り込まれる。

 時代差ぼけ(タイムラグ)の症状の一つに涙もろい感傷に浸りがちになる事がある。
 僕は明らかに法律で定められている以上の回数、降下していた。
 しかしタイムラグに必要なのは休息で、僕は入院できなかった。
 いくら休みたくたって、きっとレイディ・シュラプネルに又仕事を命じられるに違いない。
 史学部のダンワージー教授の秘書、フィンチがやって来て僕を連れ出す。
 道々フィンチが用を説明をするのだが、タイムラグのせいで頭がうまく働かず、音声もちゃんと認識できず、
よくわからない。
 教授の部屋では教授が女性を叱っていた。
 どうやら女性は過去から物を持ってきてはいけないのに
(そもそも持ち帰ろうと思っても、持って来れないはずなのだが…)、
何かを持ってきちゃったらしく(何かは良く聞き取れない)、それゆえに時間が混乱するかもしれないのだ。
 彼女は水に濡れていたが、ニンフのように優雅で美しかった
(最初に出会った娘と恋に陥りやすいのもタイムラグの特徴だ)。
 ダンワージー先生は僕にヴィクトリア朝に行かないかと言う。用事が済んだら、ゆっくり休めると。
 僕は降下装置の所に連れて行かれる。
 ダンワージー先生は降下のずれを確かめるために僕に「ここで待て」と言い残してどこかに行ってしまうが、
入れ替わりにレイディ・シュラプネルが来る。
 僕は彼女から逃れるために急いでヴィクトリア朝に降下するのだった。

 着いた先は線路上だった。僕は駅に行く。列車から老婦人と若い女が出てくる。
 迎えの人間が居るはずなのだがいないらしい。
 老婦人は僕の存在をうさんくさく思い、迎えを待たずに二人は目的地に行ってしまう。若い男が来た。
 彼は高齢の御婦人二人連れの出迎えに来たらしい。しかしそれらしき人はいない。
 彼、テレンス・セント・トゥルーズはシリル(荷物番に残っている)と一緒に貸しボートで河下りをする予定だった。 しかし帰りの馬車代を払ったら金が足りない。馬車代はご婦人が持ってくれるだろうとあてにしていたのだ。
 そこでボート下り用の格好をしている僕を誘ってきた。
 彼はマッチングズ・エンドまで下るそうだが、その名に聞き覚えがあり、きっとこの男こそ連絡相手と思い、
同行する。

 シリルはブルドッグだった。
 テレンスはプリンセス・アージュマンドという猫を探していたトシー・ミアリングと言う女性に恋をし、
彼女に会いに行くつもりだった。
 途中溺れかけていたペディック教授を救い出す。 三人と一匹はそのまま河下りをする。
 途中首尾良くイフリーのノルマン教会近くの橋で待っていたトシー嬢と会う事が出来たが、
僕は彼女と一緒にいた女性の美しさに感激する。
 しかし時代が違うと嘆いていたら、彼女ヴェリティ・ブラウンは本名キンドル、
ダンワージー先生に叱られていた女性だった。
 彼女が持ち帰っちゃたのはトシーの猫プリンセス・アージュマンド。
 執事のベインが河に放り込んだのを助けてしまったのだ。しかし僕は猫を託された覚えは無かった。
 実はトシーこそが問題のレイディ・シュラプネルのひいひいひいひい祖母で、
ヴェリティはトシーの日記に主教の鳥株の事が書かれているか確かめるために派遣されたのだ。
 僕とテレンスは彼女らと別れ、教授と一緒に河下り。
 僕がシリルが匂いを嗅いでいるバスケットを開けたら中にプリンセス・アージュマンドがいた。
 僕は最初から猫を預かっていたのだった。
 トシーが住むマッチングズ・エンド近くでボートがひっくり返り、
僕らはプリンセス・アージュマンドを連れてマッチングズ・エンドに行く。

 わざわざ日本から輸入までしているほどの金魚好きのトシーの父親ミアリング大佐は
「日本産朱文金の身体的特徴について」という本を書いたアーサー・ペディック教授と意気投合。
 三人ともこのままここに居座る。しかしミアリング夫人はシリルを嫌い、厩舎に寝かせろと言う。
 テレンスはシリルを心配し、僕はシリルと寝る事になる。テレンスの部屋は見張られていて駄目なんだそうだ。  その夜、ベインが僕の部屋に来る。
 プリンセス・アージュマンドは大佐の大切な金魚を食べてしまい、しつけとして河に投げ、
死んでしまったのではないかと心配していたのだ。
 お礼を言われる。
 後からなぜかプリンセス・アージュマンドもやって来て、
僕のベットはシリルとプリンセス・アージュマンドに占領される。

 ご近所のチャティスボーン家に行ったら、そこではフィンチが執事として働いていた。
 どうのような任務かはしゃべれないそうだ。
 トシーはミスターCと結婚するらしいのだが、テレンスと良い感じで、それらしいミスターCはさっぱり現れない。
 テレンスはあの駅にいた若い女性と結婚するはずなのだが。このままでは歴史が変わる。
 ヴェリティは何度も時代を行き来し、赤ちゃん言葉で猫に話しかけ、僕の事を素敵と思い始める(タイムラグだ)。 テレンスとトシーの婚約が発表される。一旦元の時代に戻ってみるとやはり齟齬があるらしい。
 カラザーズが戻れなくなっている。
 僕とヴェリティはミアリング夫人が大好きな降霊会を開き、偽りのお告げで、運命のコヴェントリー旅行をさせる。 確かに主教の鳥株はあったが、ミスターCは見当たらない。
 ただ執事のベインとトシーが鳥株の美醜を巡って意見の対立をしただけだった。
 副牧師はトシーにでれでれ、その様を見たシャープ嬢は帰り、副牧師は彼女を追いかける。
 帰り道、新聞にペディック教授が溺死したと書いてあるのを見つける。
 何の連絡も無いのでそう思われていたのだ。ヴェリティは元の時代に戻ろうとするがネットが開かない。
 僕が戻るが、2018年に出る。若い女性がこっそり入ってきて、そこに若いダンワージー先生が現れた。
 彼女はエリザベス・ビトナー、コヴェントリー大聖堂の最後の主教の妻だ。
 コヴェントリー大聖堂を売り飛ばすなんて夫には耐えられないと訴えている。次は20世紀前半あたりの本屋。
 御婦人方が最初の事件だと思っていたら二件目の事件だったとか、
執事が犯人とか推理小説について話している。
 次はコヴェントリー大聖堂建設の年。そして自分の時代に戻る。
 ヴェリティは今空襲中のコヴェントリー大聖堂にいた。僕はそこに行く。
 コヴェントリー大聖堂の前には何も盗まれないように頑として見張っている女性。そして人の影。
 僕はヴェリティを見つけ、主教の鳥株が大聖堂に無い事を確認する。
 二人が着いたのはマッチングズ・エンドだった。
 テレンスはペディック教授を送って、運命の相手、教授の姪モードに会い、トシーとの婚約を後悔していた。
 しかしトシーは執事のベインと駆け落ちする。初めて自分の言う事に反論したベインに恋をしたのだ。
 ベインの本名はウィリアム・パトリック・キャラハン。ミスターCだった。
 ミアリング夫人がアイルランドの名を嫌って変えさせたのだ。

 時空連続体は自ら間違いを修復する。
 きっかけはコヴェントリー大聖堂最後の主教の妻エリザベス・ビトナーが主教の鳥株を持って来てしまった事だった。
 大空襲の時、コヴェントリー大聖堂の前で頑張っていた女性が、
壊れるはずの無い主教の鳥株が無いのに驚き、空襲を知っていた人間が盗んだと新聞に投書、
それを読んだナチの情報部が暗号が破られたのではないかと考え、暗号を変え、ついにはイギリスを占領する。  故に時空連続体はどんぴしゃの時間と場所にヴェリティを出し、猫を助けさせ、
僕とヴェリティの一連の行動がトシーをコヴェントリーに連れて行き、
副牧師がトシーにでれでれしているのをデルフィニウム・シャープが見て帰って行き、
副牧師が追いかけてプロポーズし、彼女は田舎に引っ込む。
 エリザベス・ビトナーは主教の鳥株だけではなく、多くの物を救出していた。

 しかしヴェリティが僕の考えに異議を唱える。爆弾が直撃とかもっと簡単な方法があるはずだと。
 フィンチは本来殺されるはずだった猫を持ってきていた。歴史に影響を与えないものならば持ってこれるのだ。
 シュミレーションをしていたTJが齟齬の焦点は2678年だったと言って来る。はるかな未来だ。
 つまりこれら一連の騒動は未来の齟齬を修復するためのものなのか。
 とにかく僕とヴェリティはタイムラグのせいだか、歴史修復のせいだか知らないが、結婚する事にし、
過去の物を持ち帰れるとわかったレイディ・シュラプネルは新しいプロジェクトに意欲満々だった。

感想:ええ、前からコニー・ウィリスはユーモアな描写がうまいと分っていました。
 「航路」も「ドゥームズデイ・ブック」も基本的に悲劇的な話しだけど、この手のユーモア描写があったから。
 素晴らしいです。完璧です。最後までドタバタしっぱなし。
 猛女のレイディ・シュラプネルを始め、韻文でしゃべるテレンスから、犬猫まで、キャラ立ちしてる人(?)ばかりです。
 細部の文章までユーモアたっぷり。て言うか、筋より細部が楽しい話しでした。基本的に幸せだし。
 ブルドックは最高です。おまぬけな可愛い話ししか聞いた事がありません。賢い話は無いのか。

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火葬

「火葬 The Cremation」クリストファー・プリースト(Christopher Priest) ☆☆☆☆
SFマガジン4月号より

最後まで書いています。注意!

 グライアン・シールドにとって個人の火葬に参列したのは、これが初めての経験だった。
 彼の国では火葬が行われるのは滅多に無かった。
 六週間前に腰を落ち着けた島フルートからここトリンに来てまだ数時間しか経っていなかったが、
すでにカルチャーショックを味わっていた。
 グライアンは一人の若い女性があけすけな視線をこちらに向けているのに気づく。
 彼は故郷でのもつれた女性関係から逃げ出してここに来ていて、
禁欲生活を自分に課したことで物事がよい方に動いていたのだったが、彼女に強い欲望を覚えてしまう。
 女の名はアラニア・マーシア。彼は彼女について行ってしまう。

 彼女によると故人はスライムという虫に咬まれて死んだので火葬にしなければならなかった。
 スライムの雌は寄生虫として幼虫を植えつけることの出来る宿主を探す。
 宿主は通常、動物の死体や落果、あるいは朽木の中だったが、生体でも可能であった。
 スライムは体長およそ15センチ、体毛に触れると痛みを伴う発疹が生じる事がある。
 極端に柔軟でおそろしく素早かった。グライアンはこの虫が病的に嫌いだった。(そりゃそうだろう)
 彼がフルートを落ち着き先に選んだ理由の一つはこのスライムがあまりいないからであった。
 アラニアが彼を導いた場所は有名な景勝地で、
少数の人間の私有地なので多くの人間が見られない所だった。
 彼女はあからさまに誘ってくるが、彼はそのような彼女が嫌になり、元の所へ戻ろうとする。
 しかし道がわからない。結局戻る。
 戻ってきた彼に彼女は「あなたはわたしとセックスすることと、わたしの一族が所有しているお金のことと、
わたしたちから奪い取るためのあらゆるもののことを考えていたのよ」などと言う。
 「わたしたちは復讐が好きなの」かれには島の習慣がわからず、彼の国は長い間島を搾取していた。

 屋敷への帰り道、のどが渇いたと言うグライアンにアラニアはそこに生えている果物を示す。
 スライムが巣をこしらえている木に生えるピュスライム。
 アラニアによると島ではもう友だちではないふたりの人間が、ピュスライムを一緒に食べる事で、
許しを示すんだそうだ。
 アラニアはおいしそうに食べるが、彼は食べる事を拒否する。
 屋敷に着いた彼に故人の長男ファーティンが会いたがっているとの伝言があり、
屋敷を出ようとしても使用人達が屋敷から出してくれない。
 のどが渇いた彼は水を飲ませてくれと頼むが無視される。とうとう彼はあの果物を食べる。
 非常においしいものだった。黄色くて丸い芯も食べてみる。
 おいしかったが、果肉が歯や口蓋にくっつきがちで、小さく黒い種は硬かった。
 噛み砕いてしまった種は苦くて腐敗臭がした。
 果肉の一部は喉を下っていったが、残りは歯にべとついていて、舌で種があちこちにあるのが感じられた。
 顔をあげると庭は弔問客でふたたびいっぱいになっていた。
 ファーティンに妻アラニアとの事を問いただされるグライアン。
 そしてピュスライムを食べてもらえば出て行けるとファーティンは言ってくる。
 グライアンはもう食べたと果実の残りを見せる。「なんてこと、この人、やちゃった!」とアラニアが言う。
 ファーティンが果物に火をつけると、種子は丸くなり、のたうち、急激に縮み上がり死んだ。
 人々の大半はあとじさりをはじめていた。
 グライアンの全身を耐え難い苦痛が走りぬけ、思わすのけぞり、空を見た。飛行機雲が螺旋を描いていた。

感想:文章がうまい。雰囲気だけで読ませる。不安感一杯。
 アラニア、いかにも運命の女って感じで最後まであやしさ満点。
 しかし確かに所変われば習慣が変わるわけで、知らない間に危険な雰囲気ということは現実でもありうる。
 知らないってこわい。でも全てを知るのは無理。知る努力はしないとね。
 グライアンの立場としてはあれで精一杯か。そもそも女関係のもつれで国を逃げ出したのがまずかったのか。
 いや、しかし、気の毒。この手の虫は確かにおぞけが走るよね。

奇術師
奇術師
posted with 簡単リンクくん at 2005. 6.22
古沢 嘉通 / Priest Christopher
早川書房 (2004.4)
通常24時間以内に発送します。

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