ナショナル・ジオグラフィック(4)

南米の大湿原

ナショナルジオグラフィック 2005 8

「南米の大湿原」 文:スーザン・マグラス」

 アマゾン川のはるか南、パラグアイ川の上流に位置する大湿原。
 面積は19万1600平方キロ、日本の本州に匹敵するほど。ブラジル、パラグアイ、
ボリビアの国境が交わっている。
 何の変哲もない泥はラーマやバーボ。牧場の柵の周りで牛に踏みつけられた泥はマイアドゥ。
 牛の蹄の跡が残ったまま固まった泥はブロコトゥ。雨期はポルトガル語で満ちたという意味のシェイア。
 私の乗った馬が一度カイマンにつまずいた事があったが、馬は特に驚いた様子もなく、
 カイマンも横目でこちらを見ながら滑るように立ち去るだけ。
 市場で400ドルの値がつく体重500キロのコブウシが死んでいた。ジャガーの餌食。
 牛がジャガーに襲われるのは珍しくない。 
 ジャガー狩りはブラジルでは禁じられているが、牧場主はプロのハンターを雇って殺す。
 しかしここの牧場主はジャガーを守る環境保護団体と契約を交わしていて補償金を受け取る。

 大湿原の北側と東側の高地につくられた大豆や綿花を栽培するプランテーションからは有害な堆積物、
除草剤、化学肥料がじわじわと流れ出ている。
 こうしたプランテーションの所有者や作物を買い付ける多国籍企業は、
大型タンカーが通れるようにパラグアイ川の水深を深くしたり、
一年中通行できるハイウエーを建設するようにと政府に働きかけている。
 牛の飼育がブラジル各地で盛んになり、牛肉の価格が下落している。
 収入の減少を補おうと、牧場主の多くがエコツアーを受け入れている。

 ブラジルでは1967年に営利目的で野生動物を狩る事を法律で禁じたが、抜け道も多く、罰金は微々たるもの。 密猟者は好き勝手にカイマンを捕った。
 70年代後半世界中で売られた安価なワニ革製品のほとんどが、
ここのカイマンからはぎ取られた皮を使ったモノ。
 コウレイロと呼ばれるカイマン・ハンターは二人組になり夜陰に乗じて小型の平底船で浅瀬を移動し、
カイマン独特の目の光をたが狩りに居場所を突き止め密猟を続けた。
 主に取引されるのはカイマンだが、オセロット、カワウソ、ジャガー、アナコンダも捕った。
 珍獣をペットにする愛好家向けの動物売買も行われるようになり、80年代だけでも、
一万羽のスミレコンゴウインコが持ち出され、ほとんど姿を消した。
 カイマンは生息数が多かったため絶滅はまぬがれた。
 牧場にも密猟者達はやってき、牧場主達との戦いになる。
 その頃サン・パウロの新聞記者が闇取引の世界に潜入し、衝撃的な記事を書く。
 野生動物の密売でマリファナ、コカイン、武器の売買まで行われ、ボリビア、
パラグアイの軍部が関与しているという内容。
 ブラジル政府は国際的な圧力に押され、86年に特別森林警察を創設し、法律を強化した。
 92年にワシントン条約で動物の生皮および塩漬けにされた皮の輸出が禁止された。

 エコツアーにジャガーは不可欠。
 しかしジャガーに殺された牛の補償金は充分では無く、
「ジャガーのトニオ」というニックネームで知られているジャガー・ハンターは生物学者と一緒に、
ジャガーを追跡しては麻酔にかけ、研究用の無線発信機を取り付けているが、
牧場主に頼まれてジャガーを殺してもいる。

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中国の環境破壊

「中国の環境破壊」ナショナル・ジオグラフィック 2004年3月号 より ☆☆☆

 江西省の村、大橋(ターチャオ)。10年前、金脈が見つかり、採掘が始まった。
 しばらくして採掘者達は珪肺症にかかった。シリカ(珪酸)を含んだ粉塵を吸い込んだからだ。
 400人のうち、すでに100人余りが珪肺症で亡くなっている。
 豊かな生活を求めてこの20年間でざっと2億人の農民が農業を捨てた。
 中国で有害な塵埃や有毒物質に日常的にさらされている労働者は2500万人余りにのぼる。

 雲南省の那仁(ナレン)村。マツタケで豊かになり、木造の大きな家を建て始めた。
 昔この辺りの山はナラ林が広がっていたが、今は山の木々は切られ、鉄砲水に襲われるようになった。
 雲南省では毎年、洪水と土砂崩れでざっと500人が死亡、道路や鉄道が寸断される被害が出ている。
 世界銀行によると中国の土壌浸食は世界でも1,2を争うほど深刻だ。

 中国では今でもエネルギーの75%を石炭に頼っており、年間約1700万トンの二酸化硫黄を排出している。
 中国の340都市の大気汚染レベルを調べた結果、
世界保健機構の基準より緩い国内の安全基準をクリアしていた都市は3分の1に過ぎなかった。
 石炭燃焼による室内の空気汚染で年間70万人余りが死亡し、
農村部では死者の4人に1人が呼吸器系疾患で亡くなっている。

 主要都市の3分の2が深刻な水不足に陥っており、
中国全土で7億人が人間や動物の排泄物で汚染された水を飲んでいる。
 都市で排出される年間180億トンの下水の大半は、未処理のまま川や湖に垂れ流される。
 処理されるのは、10%程度に過ぎない。
 農家でも以前は、人の排泄物を肥料として畑に撒いているだけだったが、
今では窒素やリンなど化学肥料も使用している。
 中国で肝臓や胃や食道のガンにかかる割合が高いのは水質汚染と関係があることが、
最近の調査で分かってきた。

 79年以降、中国政府は環境保護関連の法律や規制を次々に導入してきたが、施行が手ぬるいか、
法律が空文化していて、その効果がないのが実情だ。
 理由は様々だが、公的資金の不足、役人の汚職が主な理由だ。
 雲南省の工業都市・昆明(クンミン)では、多くの工場が湖に廃水を未処理のまま垂れ流しているが、
地元の環境当局が法律で定められた罰金を徴収することはめったにない。
 当局は日常的に、湖の水質検査のデータを改ざんし、廃水対策が成功しているように見せかけている。
 少しでも良い数値を出すために、調査用の取水地点を湖の汚染のひどい一帯から、
水が澄んだ一帯に移したこともある。

感想

 中国は社会主義の国のはずだが、低所得者をフォローしている感じが無い。
 今の中国の繁栄は貧しい地方の人達の低賃金労働に支えられている。安いからと言って単純には喜べない。


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漢王朝

「漢王朝」ナショナル・ジオグラフィック 2004年 2月号より ☆☆☆
文:マイク・エドワーズ

 鍬を作る鍛冶職人がどの農村にもいる光景は、鉄技術が進んだ漢代の特徴だった。
 漢王朝は400年以上続いた中国史上でも長く続いた王朝だった。
 漢の技術は様々な分野でローマ帝国をしのいでいた。
 物資の運搬には手押し車や滑車を活用し、穀物や鉱石の粉砕には水力で動くハンマーを使った。
 炉に空気を送り込むふいごも使われた。そして紀元105年、蔡倫が和帝に紙の製法を伝えた。
 年長者を敬うという中国の伝統も厳しく実践されていた。
 竹簡を研究しているカナダ・モントリオールのマギル大学の研究者ロビン・イェーツによると、
祖父や祖母を叩いた嫁は、市場に放り出されると書いてあるんだそうだ。
 つまり殺されて切り刻まれるという意味だとか。

 劉邦は儒学者達を嫌っていた。
 あるとき高名な儒学者の謁見を受けた劉邦は儒学者がかぶっていた帽子を取り上げ、小便をかけたそうだ。
 項羽が劉邦の父親を捕らえ、「降伏しろ。さもなくば父親を生きたまま煮殺す。」と最後通告を突きつけたら、
劉邦は「煮殺すつもりなら、その煮汁を分けて欲しい。」と切り替えしたそうだ(父親は殺されずにすむ)。

 武帝の時代には「どの家も暮らしに困ることはなかった」と司馬遷は記している。
 その武帝が苦戦したのが北西部の匈奴。
 漢の歴代の皇帝は兵だけではなく大量の農民を辺境の地に送り込んだ。
 今、中国政府は数万人の漢人を新疆ウイグル自治区に移住させている。

 かさむ戦費に国の財政は苦しくなり、貧者を食い物にして蓄財に明け暮れる者が横行するようになった。
 狭い土地に縛られて農民はひたすらに搾取され、コネに恵まれた地主はますます土地を増やしていく。
 武帝の最初の正妻に世継ぎが生まれず、皇后の座を追われようとしたとき、娘が呪術でそれを阻止しようとした。  呪術を使う事は重大犯罪なので、関係者数百人が処刑された。
 そして紀元9年外戚(皇后の親族)の王莽が「新」王朝を打ち立てる。 
 王莽は劉家の土地を解体し、農民に分け与えようとしたが、改革はうまくいかず、
新王朝は農民達によって倒される。
 黄河の氾濫によって土地をなくした農民達が飢えた暴徒となって略奪を働き、やがて反乱は全土へと発展する。
 反乱の徒は目印に赤く眉を染め「赤眉(せきび)の乱」と呼ばれた。紀元23年、彼らは王莽の首をはねる。
 そして高祖劉邦の子孫である劉秀が即位を宣言。洛陽を都に定める。
 洛陽は50万人の人口がひしめく世界有数の大都市に発展。
 宮廷生活は華やかだったが、農民達の生活は悪化していった。
 借金がかさんで奴隷になる者もいたが、多くの場合は小作農になった。
 仕事にあぶれた人間が地方に増えていった。
 洛陽の罪人墓地跡で発見された墓石に刻まれているカオ・フーもそんな一人。
 カオはフ・フェイという人物の身代わりで、5年の刑期のうちに死亡した。
 裕福な者が有罪になると、別の人間が雇われて牢屋に入る事があったのだ。
 洛陽から数キロの場所に「白馬寺」がある。
 紀元67年ごろ、二人の高僧がシルクロードを通って、洛陽に入り、この地に仏教をもたらしたのだ。
 二人は白馬に乗り、仏像と仏典を持ってきた。

 132年、張衡が地動儀を発明する。
 それは幅が2メートルもあり、青銅製の壺のような形をしていて、上部には竜の頭が8個付いていて、
それぞれの下に青銅のカエルが構えている。
 この壺は地震のわずかな揺れも感知し、竜からこぼれた玉をカエルの口が受け止める。
 いわば地震計の先駆けだ。さらにこの壺の仕掛けで、玉を落とした竜がどれかを見れば、振動の方角も分かる。
 この頃にはあらゆる面が混乱していた。
 洛陽では、儒教の学問所で学ぶ大勢の人間が、政治の腐敗に対して抗議を始める。
 これは中国史上初の学生デモである。農民の反乱は各地で起こり、184年には都にまで危機が迫った。
 6年後有力者の董卓が幼い劉協を即位させる。軍人同士の争いは激しくなり、220年、劉協は退位する。

 他の人から聞いた項羽と劉邦の話のおかげで私の劉邦のイメージはすこぶる良かった。 
 寛容精神でどんどん味方を増やしたというイメージだったのだ。
 しかしまず劉邦の死んだ後だが、正妻のすさまじい悪行を知り、びっくり。
 そして毎日新聞で連載していた宮城谷昌光さんの「香乱記〈上巻〉」でまたまたイメージ悪化。
 そしてこれである。もちろんすごい所もあるからトップについたんだと思うけれど、敬意に値しない人物のような。
 人間、多面的なのは当たり前だが。
人物 中国五千年(3)漢王朝の光彩

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ナショ・ジオ 04.1

「ナショナル・ジオグラフィック 日本版 2004年1月号」☆☆☆

「昆虫の不思議」フンを遠くへ飛ばすイモムシ

 セセリチョウの仲間の幼虫のある体長4センチ程のイモムシはフンを1.5メートルほど先に飛ばす。

 フンがたまっていると、近くに虫がいるなと判断する私にとっては困った虫だ。知能犯。

「南米の最南端 風の吹きぬけるパタゴニア」文=サイモン・ウォロール

 パタゴニアでは「エスタンシア」と呼ばれる羊の大牧場が崩壊してしまった。
今ではパタゴニアの6分の1を350人の外国人が所有している。その多くは米国人だ。
エスタンシアにとって決定的打撃になったのはハドソン山の噴火である。
火山灰は羊の歯をすりへらし、池を埋め、飲み水を奪った。観光で食いつないでるエスタンシアもある。
雨が少ない土地柄だ。

 ラ・コロネル。イタリアのアパレル会社ベネトンが所有する最大のエスタンシアだ。
エスタンシアは元々町や地域を結ぶ社交場だった。
しかしラ・コロネルには鋼鉄のゲートが設置され、暗号を入力しないと鍵が開かない。
パタゴニア産のウールは、ほかのウールを違って微妙な色合いを出せるので、アパレル会社に珍重されている。
その生産量を安定させることが目的なのだ。過剰在庫を防ぎ、環境破壊を食い止め、羊毛の価格は上がった。

 19世紀末、ヨーロッパ人入植者は先住民族を虐殺し、キツネやピューマをヒ素を塗った肉で毒殺した。
そして過剰牧羊のために、土地が回復不能な状態に陥った。
衣料品メーカー、パタゴニアの元CEOのクリス・トンプキンスはモンテ・レオンというエスタンシアを買った。
彼女はパタゴニア・ランド・トラストを設立し、パタゴニアの自然を守ろうとしている。
そしてモンテ・レオンを国に寄贈した。

 何百もの手形が並んでいる「手の洞窟」を作った先住民テウエルチェの最後の一人は1960年に亡くなっている。彼らは牧羊の邪魔と射殺されたり毒殺されたりしたのだ。全滅させるなんて怖い。

 下手をすると数百キロおきにしかないガソリンスタンド。町と言っても、酒場一軒、ガソリンスタンド一軒、電話一台。ひろすぎる。何にもなさすぎる。外もビョウビョウと風が吹いてるだろうが、心の中にも風が吹きそうだ。

 

 

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