武家用心集(3)

磯波

武家用心集乙川優三郎 磯波☆☆☆☆☆

 海が見える小高い丘の中腹にある家に一人住む奈津。
彼女は長女だったが、嫁ぐ事をせず、女塾を経営していた。
二人姉妹の妹が婿をとり、実家の道場を継いでいる。妹の五月には三人の子が居る。
 そんな妹が不意に訪ねてくる。妹はいつもそうなのだ。そして奈津に縁談があると言う。
 次第に見えてくる姉妹の確執。幸福に見えた妹は必ずしもそうではなかった。
奈津は過去にけじめをつけ、縁談を受けようかと思う。
 いくらでもドロドロしそうな設定だが、よりよい未来に歩もうとする姿に共感を覚える。

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邯鄲

武家用心集乙川優三郎 邯鄲 ☆☆☆☆

 輔四郎は家老から忍びの者である剣の使い手谷川次郎太夫を討ち取る事を命じられる。
谷川は中老を暗殺したと言うのだ。
 輔四郎には勝つ自信がない。心残りなのは女中のあまの事である。輔四郎は一度離縁している。
男一人では何かと不自由なので女中を雇う事にしたのである。
あまは14で、11人家族の末子で、ぎりぎりで生き延びてきた少女だった。
浅黒い手は傷だらけで、満足に挨拶も出来ない、あまりに貧しい姿の娘だった。
最初は面倒を雇ったようなものだと思ったが、三年もすると一通りの事が出来るようになった。
そして今は二十歳。嫁ぐ先も見つけていないし、彼女はもちろん実家には帰れない身である。
 友に頼もうかと思うが、結局言い出せず、いくらかの物を売って金を用意する。
彼女はすでに死ぬ覚悟を決めた輔四郎に、少しでもお役に立ちたいという。
谷川を討つ手助けをしたいと言うのだ。もちろん輔四郎はそれを断る。
 
ネタバレ注意

 輔四郎はこれからどうなるのだろう。先行き不安である。
彼はひたすらに生きる決意を固めるのだが、上手くいくのか。
 あまという女が魅力的である。生き残るためにひたすらに努力してきた彼女。
虫の鳴き声をまねる彼女のたたずまいが目に浮かぶ。
 幸せになって欲しい。

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しずれの音 他

武家用心集乙川優三郎 田蔵田半右衛門 ☆☆☆☆☆

 倉田半右衛門は八年前から釣りをするようになった。ある事件がきっかけである。
歩いていたら、一人対数人での斬り合いにぶつかり、その一人の方が友だったのである。
友に加勢したら、いつの間にか友は逃げ、数人の武士達は捕り方だった。
友は悪い事がばれ、逃げる所だったのだ。半右衛門は石高を減らされ、お役も閑役にまわされたのだった。
それ以来、人付き合いを避け、釣りをするようになったのだ。
親戚中にバカにされたが、妻は何も責めず、親戚の盾になってくれた。
 そんな時、行き来の無かった兄が突然現れ、ある重職が不正をしたので、斬ってくれと頼まれるのだった。
あまり気の進まない半右衛門は(妻も反対)重職の事を調べるのだったが…。
 鬱屈した思いはあるものの、淡々と生きる主人公。
調べるうちに周りに対する見方も変化し、最後に自分のいたらなさを知る。
そしてやはり淡々と生きることを選ぶ。ちゃんと多面的な物の見方をしようとする主人公に好感を感じる。

武家用心集乙川優三郎 しずれの音 ☆☆☆☆☆ 

 ええ!!泣きましたとも!声を上げて!(私は涙もろい)
 寿々はもう嫁に行って、娘が一人いる女。彼女は実家にしょっちゅう行く。
なぜなら母が寝込んでいるからだ。兄嫁は体が弱く、何かと言うと彼女を呼ぶのだ。
 寿々は母の連れ子で兄とは血が繋がっていない。
母は後妻に入ったとたん夫を亡くし、二人を苦労して育てたのだった。
苦労がやっと終わったと思ったら、寝付いてしまった。
 そんな時、突然兄にしばらく母を預かってくれと頼まれる。
兄嫁が実家に戻って、戻ってこないと言うのだ。
兄嫁の実家も、体の弱い兄嫁を心配し、離縁してくれと言っていると言うのだ。
寿々は母親を預かる。しかし待てど暮らせど兄からは何の連絡も無く、
夫が兄嫁の実家に尋ねると、そんな話は初耳だと言う。夫は怒り、母親は元気を無くしていった。そして…。
 兄嫁は体が丈夫では無く、姑の世話は大変なのだろうと思うのだが、
やはり兄達のやり口は汚いとしか言いようが無い。まともに頼んでも駄目だと思っているにしても…。
確かに実の娘の方が良いとは思うのだが、夫に対する遠慮というものがある。
しかしただひたすらに苦労して二人を育てた母親を思うとやりきれない。最後の救いがありがたかった。

武家用心集乙川優三郎 九月の瓜 ☆☆☆☆☆

 映画ブロードキャスト・ニュースを思い出しました。
 太左衛門はそれなりの地位まで上り、隠居がみえる年になった。
妹の娘の結婚式で気になる顔を見る。
それはかつて太左衛門の讒言(上司の指示)により出世の道を絶たれた友の息子の顔だった。
 彼は部下に友の現在の様子を見てきてもらうが、友はすっかり隠居が身についていて、
一人で畑仕事をしていると言う。太左衛門は苦労人らしい妹の婿に友の現在の心情をどう思うか聞く。
この一連の動きの中で、太左衛門の心情は変化する。
隠居が見えてくると、出世にはあまり意味が無かったと思う。
そしてこめつきバッタみたいに頭を下げながらお酌をする妹の婿を初めは男らしくないとイヤに思うが、
最後にはいい婿だと思う。そして友に会い、友に負けたと思う。
 多様な価値観を太左衛門は知り、気持ちの良い思いをする。すがすがしい話だ。

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