蟲師(2)

夜を撫でる手

「夜を撫でる手」蟲師6より 漆原友紀

 夜の山。果実酒のようなすえた匂いを感じるギンコ。匂いの源は人の影。こっちを見ている。動けない。
 相手は人と気づき、見逃してやると去る。動けるようになる。次の日、市で干し肉を求めるギンコ。
 地元の人によると獲物がさっぱりいないそうだが、一人の少年が売っていた。
 しかしその肉は腐ったような匂いがした。うちになら新しいのがあると言う。
 その家からは昨日の夜の匂いを同じ匂いがした。家にあった肉も腐さった匂いがした。
 家にいた青年には腐った匂いは感じられないらしい。青年は新しいのを取ってくると言う。
 こっそり後をつけるギンコ。青年は鹿を見つけると、鹿は青年に近づき、青年が右手で触ると死んだ。
 腐酒(ふき)。その手で狩った獲物はどんなに新しくても不味い。意のままに獲物を狩る手は代々伝わる。
 青年の父親がそうだった。掌に目玉のようなあざ。腐酒とは生命の素たる光酒の腐れてしまったモノ。
 本来成るはずの蟲に成れず、赤い泥状となり地下水から地上に湧き出る。
 果実酒のような匂いがするが毒性があり、高い濃度で口にすれば死に至る。
 だがごく稀に毒に耐える体質の者がある。
 腐酒単体には意志もなくただ更なる腐敗を待つだけのモノだが、動物の体内に入り血に紛れると命を得、
宿主もまた特殊な力を得る。
 甘い匂いを掌から出し獲物を酔わせ引き付け酔わせたやすく狩りをする。
 そしてそれは血を介して子々孫々まで伝わってゆく。力を得る者はごくわずか。
 力を得なかった者は毒のため長くは生きられない。ばあちゃんは血を吐いて死に、弟も同じ病。
 光酒を一定量飲めば腐酒は消滅する。調達してこようとギンコ。兄の分も。父親は異常な死に方をした。
 ギンコが去った後、薬を飲んでくれるよねと兄に念を押す弟。元の辰兄に戻ってほしい。
 「何言ってんだ。俺は別に何も変わらんだろ」辰兄の目玉模様の掌が卯介を撫でる。

 光酒を持って又訪れたギンコ。兄は又宵の口に獲物を狩りに出かけていた。
 山のあっちこっちに無残な姿をさらす獲物達。父親がいなくなってから辰兄は父ちゃんに似てきたと卯介。
 父親もよく余分な狩りをした。父親は体が透けて見えるようになり、影を無くし、消えた。
 自分より強い先代がいなくなると枷が外れたようにその子孫の力が増すと言う。
 腐酒の浸食が進み、やがて体を完全に乗っ取られる。父親は死んだわけでは無い。
 実体をなくし、心もなくして、今も山を彷徨っている。兄には光酒を飲む気は無かった。
 蟲に踊らされてるだけとギンコ。
 「俺はなァもう二度とごめんなんだよ。親父がいた頃みてえに、狩られるかもしれねえ側に戻るなんてな」
 「辰兄やめてよ!!…大丈夫だよ。怖い事なんてないよ。おれ襲われない方法知ってっから。だから…」
 兄は去る。

 掌の目玉模様を見ながら元の俺に戻ってやらねえと思い悩んでいる辰兄、熊と間違えられ、右腕を撃たれる。  彼は穴に隠れ夜をやり過ごす事にする。卯介の呼び声に穴から出る辰兄。
 穴の外で待っていた沢山の鳥に襲われる。鳥にとって目玉模様は恐ろしい。
 しかし血で模様は隠れ、果実の匂いのする腕は鳥にとって甘美な餌だった。
 辰兄に自分も狩りを覚えると言う卯介、辰兄も早く元気になって一緒にしよと言う。
 彼は残った左腕で卯介の頭を撫でるのだった。

感想:結構怖い作品です。漆原さんは蛇に睨まれたカエルを見たそうで…。
 あの右手、人間狩りにも使えるんですね。 辰兄はそんな事はしていませんが、今にしそうで…。
 動物をむやみやたらと殺していると言うだけで怖い。しかもその肉は腐臭を放ち不味い。
 鳥があのぐらいの目玉を怖がるかどうか疑問ですが…。そう簡単に人間は襲わないと思うし。
 でも、相手は血を流してますしね、襲うか。「天辺の糸」はアニメで見ましたね、良い作品です。
 「囀る貝」父親が恩讐を超えて良かったです。
 「雪の下」自分の不幸は自分を思ってくれている人の不幸ですね。「野末の宴」おお、その酒、飲みたい!!

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一夜橋

「一夜橋」蟲師4 漆原友紀 ☆☆☆☆
蟲師 (4)アフタヌーンKC (332)

 かずら橋を渡る若い男女。女ハナの足元の板が割れ、ハナは深い谷底へと落ちてしまう。

 同じ橋を渡るギンコ。橋を渡った先で、若い男に出会う。男はハナと橋を渡ろうとしていた男だ。
その男に訪ね先の住所を訊くギンコ。

 訪ね先はハナの実家だった。
ハナは頭を打った跡も無く、無事帰って来たのだったが、ぼうっとしているだけになってしまっていた。

 ギンコが出てくるのを待っていた若い男ゼン。ハナの縁談が決まり、二人は駆け落ちしようとしていたのだ。

 谷戻り。
ハナのように谷に落ちて無事帰ってきたのは良いが、
中身がもぬけの殻みたいになった状態の人の事を村人はそう呼んでいた。
谷戻りは谷に一夜限りの橋が架かると死んでしまうと言われていた。

 それはニセカズラと言う蟲の仕業だった。ニセカズラは死体に寄生している可能性が高い。
ハナはニセカズラが抜けたらおそらく死んでしまうだろう。ニセカズラは約20年毎に一夜橋を作る。
どうやら今年がその20年目だった。

 ギンコはハナの母親にハナから蟲を払ってくれと頼まれるが、無謀な事は出来ないと断る。
ハナの母親は橋を切り落とす。

 ハナからニセカズラが抜け、ハナは死んだ。
村八分になっているゼンにギンコは一夜橋を渡って村を出ないかと誘う。

 「蟲師」、大好きです。モワッとした空気が押し寄せてくるような雰囲気のある絵。
この雰囲気そのままにアニメ化できる人はいないかと思うけど、難しいかな。実写化はもっと考えられない。

 他の話も良いです。はずれが無い。
この話だって考えて見ればゾンビ話なんだろうけれど、怖いというより、哀しい感じに書かれています。

 蟲は生命の元の元の原型のような存在。この世界は自然で一杯だから、気が形を成したもののように見える。

 実際、気脈とかあるのかもしれないし、見えない何かはいるのかもしれない。
私は不思議体質では無いので、特殊なものは見ないけど。
生物のすごい造形とか、すごい能力とか、特殊な関係とかを思うと、何かの意思はあるような気がする。

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