« 誰も知らない | トップページ | 南米の大湿原 »

雨にもまけず粗茶一服

「雨にもまけず粗茶一服」松村栄子

最後まで書いてる長すぎるあらすじです。注意!

 遊馬(あすま)は免許証と一緒に高速道路のレシートを落とし、受験勉強をしている振りして教習所に通い、
入試に行く振りしてコンサートに行っていた事がばれる。
 怒った父、秀馬(ほつま)は遊馬に比叡山の天鏡院で修行して来いと言う。
 遊馬は五つの大学を受けてる事になっていたが、実は四つの京都の大学は受けず、東京の一つだけ受け、
落ちていた。
 親としては、茶道をやるにあたって、江戸ぶりだけでは通らない局面があるので、
京都の茶を仕込まれてこいと京都の大学を受ける事を勧めたのだが。

 彼の家、友衛家は武家茶道坂東巴流を継承しており、村上源氏の流れを引く家柄。
 京都にもう一つ巴家と言う茶家があり、これも友衛家から出ている。

 カンナが遊馬に握り飯と麦茶を持ってくる。
 彼女は小さい時足を踏ん張って、頬を真っ赤にして、
「たのもう、たのもう」と友衛家の門前で甲高い声を張り上げ、内弟子の、祖父、弥一を訪ねてきた。
 彼女は女性の門弟第一号になる。坂東巴流は剣も弓もやっており、彼女の剣道はそうとう強い。

 京都の巴家が宗家で、遊馬の流派は小さい。
 遊馬は中学生の時京都に行き、巴家の後継ぎは一つ年上だったが、彼に、
「坂東巴流ねぇ。ちんまりしたはってええねぇ」と言われた。
 ムッとしたが何も言い返せなかった。で、京都には行きたくない。
 遊馬、弟の行馬(いくま)にこの家継ぐ気ないかと聞くが、
彼はカンナに変な事を口走るとお家騒動になると固く諌められていた。
 弟には人生設計も遠大な計画もある。当てにされても困る。遊馬は家出する事にする。
 弟が家出のアドバイスをする。彼は小四の時軽い家出をした経験があるのだ。その時、彼は悟った。
 うちの流派も京都の流派も最初に作ったのは次男か三男。
 本家にいても用無しの息子が外に出て一から一生懸命作った。しかし跡を引き継ぐのは長男。
 ご先祖を見習って、自分の運命は自分で切り開かなくちゃいけない。行馬は家出する遊馬に茶杓を渡す。

 家出先は高校時代のクラスメイトでバンド仲間の萩田のマンション。
 ただただ音楽を聞き、ギターやベースの練習をする日々。

 二三週間経ち、萩田が旅行に行くと言う。
 ヴォーカルの久美ちゃんが帰省する友達について遊びに行くので車を出してくれないかと言うのだ。
 京都まで一人で運転するのはつらいと遊馬も誘われる。
 そう久美ちゃんのお友達は翠(みどり)ちゃんと言う京女なのだ。京都を嫌がる遊馬。
 しかし冷房代にも金がかかると言われる。彼は一文無しで世話になっていたのだ。
 遊馬は家から持ってきた茶杓を取り出す。売るつもりだ。友達には茶道の家と言うのは秘密にしているが。
 茶杓は徳川慶喜作で、百万でも二百万で良いそう。
 道具屋は手元に現金が無いので明日いらしてくださいと言う。次の日、行ってみたら、そこに弥一がいた。
 遊馬は仕方なく京都に行く。京都では友衛と言う苗字は目立つので、萩田にアズマと呼んでくれと頼む。
 遊馬は途中、京都弁を気持ち悪いと言い、翠ちゃんを泣かせる。

 翠ちゃんの家は畳屋だった。祖母は茶道の先生で、巴流だった。
 遊馬は翠にお茶とかお華とかあんな澄ましたものは大嫌いだと言う。

 萩田は帰るが、おまえは乗せていかないと遊馬は言われてしまう。久美ちゃんに嫌われたのだ。
 ギターもへたなので、バンドの練習ももういい。家に電話をかけようとするが、バッテリーが切れていた。
 彼は翠ちゃんのお父さん、高田さんの手伝いをする。寺が嫌で家出したと言ったので、寺の子と思われる。
 途中、不動産屋による。そこの紹介で得た仕事だからだ。そこの哲さんは翠の幼馴染、翠にご執心だ。
 彼は熱心に店を売る事を勧める。町家がはやっているのだ。
 彼は一人ではす向かいに住んでいる祖母の事も心配だろうと言う。
 高田は遊馬がばあさんの面倒を見ると言う。遊馬、しばらく翠ちゃんの祖母の家に居候する事になる。
 志乃に信楽の水差しを出してと言われて、水差しを濡らして水を入れる。
 祖母、志乃はお茶を点てようとするが、翠がアズマ君はお茶大嫌いと忠告、いづらくなって外に出る。
 寺の門をくぐる。リュックから茶杓を取り出し、売るしかないと考える。
 転がっていた棒に気づき、久しぶりの素振りをし、大木を打ってみたら、咎められる。お坊さんだ。
 棒は茶杓にしようと干していたもの。坊さん、茶杓の筒に気づく。やってきた哲も気づく。
 彼、坊城哲哉は茶をやっていた。坊さんの名は不穏(ふおん)。二人とも巴流。
 遊馬、不穏に茶杓を持って茶会の手伝いをするように言われる。
 遊馬は、翠の評判の事もあるので、畳屋の仕事を習いにきた事になる。
 翠のアズマへの意地悪な言い様を叱る志乃。
 翠はアズマが京もお茶も好きやないと言ったと主張するが、
信楽のお水差しをとっぷり濡らして置いたアズマが茶を知らないとは腑に落ちない志乃。
 翠は久美ちゃんからアズマ君のお父さんは警察官と聞いていて、
寺の子と言う事になっている遊馬に不信感をいていて、その事を話す。
 しかし、その不信を哲哉と志乃に話した事で、幾分気が晴れる。

 不穏のお茶会。遊馬、茶巾と盥を取ってきてと哲哉に命令され、茶巾を盥で絞り、茶碗に畳んで入れる。
 茶筅を乗せたら、茶筅が逆さまと哲哉に注意される。
 しかし、後から来た男、今出川(いまでがわ)幸麿(ゆきまろ)に間違っていないと言われる。
 幸麿はどちらの流儀と訊くが、遊馬はでたらめでしたと言う。茶巾をつまみ上げる幸麿。
 そのたたみ方は坂東千鳥と言う特徴的な物だった。

 茶杓を売ろうとするが、徳川慶喜の作と言っても京の道具屋の反応は悪い。
 ある店主なんかさんざんほめた後、京都では徳川さんの茶杓は使いづらい、ところでこれはどうですと、
筆ペンで書いたばかりの札を置いた<伝 宮本武蔵作>の茶杓を見せてき、ばかばかしくなった。
 遊馬は托鉢僧を見て思いつく。不穏から托鉢の道具を借りて托鉢して金稼ぎ。
 しかし錫杖をジャラジャラしていたらからまれ、坂東巴流の剣道で撃退、逮捕される。不穏が引き取りに来る。
 彼は茶杓の筒に百円玉を詰めていた遊馬を茶杓とは先人への敬意と表すための物、
茶杓そのものより作者や銘が尊重される事さえあるのに、
それを記している筒にあさましい金銭を詰め込んでと叱る。
 浄財ですと反論したら、そうですね、浄財にしなければと、金をさい銭箱に入れられてしまう。

 遊馬はギターを売る。翠は一緒に帰らないかと言うが、もう少しここにいてみると遊馬。
 翠は気になっていた遊馬の家の事を聞いてみる。
 遊馬ははっきりした事は言わなかったが、騙されてるわけでは無いらしいと翠はほっとする。
 遊馬、身元を偽っている事もあり、髪も青く染めているので働き口が無く、ガソリンスタンドか、道路工事か、
夜の商売か…、志乃が小遣い稼ぎとゆうたら新聞配達しか思いつかしませんわと言い、哲哉、
新聞配達がええかもしれへんと言う。
 新聞屋が不穏さんの檀家なのだ。
 敬老の日、檀家の長命な老人達をもてなす会があるから、その日に来てみたらと不穏。
 スタッフになる若手がいないのだ。新聞屋も来る。志乃は翠も手伝いにつけてくれた。
 翠がお茶を点てたが、不穏が疲れたろうから、遊馬に替わってもらってはと言う。
 お茶にお湯を注いで茶筅を振るだけだと。遊馬、替わる。客達の話はつい先日亡くなった魚正さんの話になる。 話が面白いので気を取られ、小声で言われた仕舞いの合図に無意識で片付けてしまい、気がついた時には、柄杓と蓋置は棚の上で弓の荘り(かざり)に置かれていた。
 翠も不穏も不思議そうに遊馬の手元を見つめる。新聞屋の夫婦に引き合わされ、彼らと一緒に店まで行く。
 遊馬は茶がおいしいと褒められる。
 どちらの先生についているのか聞かれ、誰にもついていないと答えたら、背筋が伸びてて、
指の先までぴんとして、それでいてどこにも力が入っていない、昨日や今日始めたひととは違うわと言われる。

 遊馬、幸麿にゴアテックスのヤッケを貸すから、不穏の寺へ来いと言われる。
 幸麿はそこで魚正の茶道具を遊馬に見せる。彼の姉夫婦が道具屋をやっいるのだ。
 道具はすべて魚に関係がある意匠だった。
 魚屋にあってこその値打ちある道具一式だが、息子はどうしても処分したい。
 息子は一番値打ちがある持ち物が見つからないと言う。大海。大きくて平べったい道具。
 茶入れは誰にも貸していない。ではどこにあるのか。
 幸麿は魚正のおじいさんの気持に気づき、場所を言えなかった。
 遊馬が答えがわかるまでヤッケはお預けと幸麿。遊馬は気付く。それは床下の炉だ。
 茶を知る人なら真っ先に思いつく。魚正のおじいさんは家族にこそ発見してもらいたかったのだ。

 私立高校の和室の畳替えの手伝いに行く遊馬。
 女の子が指輪を見つけたら教えてくれと言う、先生には内緒で。指輪は見つけた。
 連絡したら、東門の弓道場のあるとこに来てくれとの事。そこには幸麿もいた。幸麿はこの学校の先生だった。 気付かれぬうちに退散と踵を返したら、目の前に行馬が。「お兄ちゃん!」カンナに気づかれ、取り抑えられる。 女の子は桂木と言う名前。
 行馬は中東部の受験生で、剣道部と弓道部を見学したいと言うので、中学には弓道部が無いので、こちらに。  行馬は坂東巴流の家元の御子息で、ならお兄ちゃんと呼ばれていた人も…。遊馬、正体がばれる。

 行馬、どうせ京都の空気を吸うなら早い方が良いとこちらの中学を受験。受かったら巴さんちに下宿。
 茶杓の事で家は大変らしい。
 あの茶杓持っていけってよこしたのはおまえじゃないかと遊馬は言うが、
行馬としては坂東巴流の嫡流の証明として渡したらしい。
 家宝なのだ。武蔵の茶杓まで持ち出すなんてサイテーと非難される。しかし遊馬には覚えが無い。
 遊馬は伝宮本武蔵作の茶杓を思い出す。
 ひどく華奢に見えて、武蔵作とは思えなかった事を話したら、武蔵の茶杓は細いらしく、その店に赴く。
 売れていた。誰かは知らない。身うちの犯行としか思えない。
 今秀馬に言ったら遊馬の仕業と決めつけられ、日本刀で遊馬に斬りつけかねない。
 遊馬、プリペイド式の携帯を渡される。
 カンナ達は去り、正体がばれた遊馬は高田夫婦に茶をふるまう事になる。
 高田さんはあんさんは、お茶、好きやでと言う。
 遊馬は昨日からの流れで疲労困憊、ぐっすり寝入り、気がついたら、夢のように美しい女の人に起こされ、
夕刊配達に出かける。

 高田は不穏の師匠にあたる禅寺の茶室の畳替えをし、そこの茶会に誘われ、高田は遊馬をよこす。
 不穏も行く。不穏はそこで食籠を傷つけてしまう。
 翌日食籠を修理させていただこうと思ったら、和尚はあれは一閑堂、昨日の茶会の正客の息子、
次客の夫が直しに出すと言う。
 寺には一閑堂もいて、和尚は不穏に大海を見せる。
 箱は新しかったが、一閑堂はご希望でしたら、お家元に書きつけもろてきますし、
遠州でも不昧公でも探さしてもらいますと。
 探すと言うのはねつ造すると言う事。一閑堂は金沢の呉服屋の蔵から出たと言う。
 しかしそれはあの魚正の物。茶入れが見つからないので、一閑堂に頼んだのだ。
 不穏は真実を告げれば、失礼しましたと言ってよそへ持って行き、
遠州の箱書きのついた古めかしい箱に入れるかもしれないと、黙っている。

 不穏はその事を幸麿に話す。そこに哲哉に無理矢理連れられた遊馬も来る。
 一閑堂の話をしていたと哲哉に言ったら、えげつないひとだが、
家元が書いた軸や削った茶杓を売りさばくがうまいから今や№1の道具屋だと言う哲哉。
 幸麿は遊馬にこないだのお茶杓も良かったけど他にもええもん持ってはんのとちがいます?と聞き、遊馬、
武蔵の茶杓を思い出し、話す。
 数日後に連絡をよこす幸麿。一閑堂が持っているらしい。
 風林堂と一閑堂は同級生で、風林堂が武蔵のお茶杓の事を言い、一閑堂はにべもなかったが、
すぐに素人さんが買いに来たそう。
 一閑堂がよこしたのではないか。
 カンナは遊馬の事は伏せたが、武蔵の茶杓については秀馬に話してい、
彼は宗家巴流の氷心斎に協力を求めていた。
 氷心斎に最も近い一閑堂が手に入れているのなら連絡があってもよさそうなもの。隠しているのだ。
 どこかの数寄者や田舎の富豪に持っていかれるとコト。証拠をつかまないと。
 買っていったのは三つ鱗の紋を背負っていた五十年配の女性。遊馬にはその紋に見覚えがあった。
 この前の茶会で一閑堂のおばさんと一緒に来てた女性。茶杓は見つかる。
 祖父の風馬が一人で引き取りに来る。
 彼は武蔵の茶杓紛失がショックで寝込んでいたので、遊馬に世話を頼むカンナ。
 風馬は氷心斎巴朱鶴に遊馬が持ち出した事になっている武蔵の茶杓流出の本当の事を話す。
 ばあさんが亡くなり、代も譲り、サヤカと言うばあさまに恋心を抱いた。サヤカはもてた。
 遠方から訪ねて来る幼なじみをもてなすと言うので、酒屋は酒を、八百屋は野菜を、
サラリーマンだったじいさんは買い物を手伝うと言うので、風馬、門外不出の茶杓を貸してあげようと言った。
 サヤカは感激し、借りた茶杓を毎晩抱きしめて寝て、そのまま亡くなった。
 風馬は呆然としていたが、気が付き、家族に茶杓の事を聞いたら、棺桶に入れたと言う。
 棺桶はもちろん火葬場で燃えた。おそらく、他のじいさんがやっかみ、茶杓を棺桶から取り出したのだろう。
 風馬は息子の秀馬に真実を言えない。ただでさえ態度がでかいのに、もっとひどくなるのは目に見えている。
 武蔵の茶杓は遊馬が盗んだ事になっている。遊馬もそれで納得した。
 しかし、自分が亡くなったら、息子に真実を話してくれと風馬は氷心斎に頼む。
 風馬、タクシーに乗ろうとして倒れ、病院に入れられる。
 病院にかけつけた遊馬に対応したのは穏やかで優しそうな青年で、
巴家の後継ぎと会った時に出会っていた人だった。

 志乃の住んでいる離れから美しい女性が出てくる。いつぞや起こしに来た女性だ。
 彼女は奈彌子、巴流のお譲さまだった。遊馬、口止めするために彼女を追いかける。
 家出して勘当された事を話すと、なぜか泣き崩れる奈彌子。遊馬、困りはて、不穏の寺、長命寺に連れていく。 不穏は彼女を次の日曜日の幸麿邸の茶会に誘う。

 茶会。 幸麿は生徒達を連れてきていた。
 携帯が鳴り、高田家に遊馬に会いに来ていたカンナからだったが、彼女も桂木佐保と一緒に来る。
 入口がわからなくてうろうろしてたら、佐保が来たのだ。
 幸麿を真中に女性達はお庭で茶を飲み、縁台には遊馬と哲哉と不穏が残る。哲哉は奈彌子の事を話しだす。  彼女は、遊馬が病院で会った男、鶴了と恋仲だった。
 しかし巴家の総領息子が死に、奈彌子の婿が継ぐと言う事になった。
 しかし花屋の息子の鶴了では格が足りなかった。
 志乃は、自分の家で奈彌子と鶴了が会えるようにしていたのだ。

 不穏が伊織と称する子供を連れて来る。托鉢僧として暴れた遊馬を見て弟子になりたいそうだ。
 不登校の子だった。

 大みそか、鶴了が来る。彼は来年から札幌の道場に詰める事を命じられていた。
 彼は憂いに満ちてい、志乃は彼を引きとめる。遊馬は鶴了にいっそ坂東巴流の家元になったらと言う。
 友衛遊馬ゆう立派な後継ぎがおるやないですかと言う鶴了に
「家元んちに生まれたからって、家元に向いているとは限らないし」と遊馬。
 巴家のぼんも似たような事を言っていた。
 遡れば養子が結構いるし、巴家に生まれたとゆうたかて、家元と継ぐ資格にはならん。それで良く勉強した。
 しかし色々言う人はいるし、大所帯なのでお茶とは関係ないややこしい事もある。
 もっと小さな流派だったら、お茶の事だけしてられたのに。“ちんまりしたはってええねぇ”
 あれは皮肉ではなかったのだ。

 遊馬は佐保と付き合うようになる。

 伊織の本名は宮本一郎。伊織は気付いていないが、いつも母親がそっと見守っていた。

 遊馬、哲哉の言いつけで、不穏にお茶会の予定を聞きに行く。不穏は写経をしていた。
 「鏡清 僧に問う、門外これ何の声(おと)ぞ。僧云く、雨滴の声」あるとき鏡清という老師が若い僧に聞いた。
 外の音は何だ。若い僧は答えた、雨だれの音ですと。“雨滴聲”と書かれた軸がかかっていた。
 「草裏漢」と書いた紙を滑らして来る不穏。そうりのかん。ひよっこ野郎と言う意味。「明珠在掌」
 みょうじゅたなごころにあり。誰でも珠は持っている。磨かなければ意味が無い。「臥龍」
 いずれ天に昇るときをじっと待っている龍。最後に「日々是好日」をよこして来る。みな、圜悟の言葉。
 幸麿が圜悟の軸では無いかというのを持って来たのだ。風林堂が持ち込んだのだ。
 いつもなら一閑堂に聞くのだが、武蔵の茶杓の件で欺いたのが許せない。
 受験んシーズンで忙しい幸麿の代わりに不穏が真珠庵の和尚に持って行って訊く。偽物だった。
 そこからの帰りにカンナに会う遊馬。彼女は幸麿と付き合っていた。風林堂は一閑堂をこの軸でだます。

 奈彌子が突然高田家に現れる。妹の眞由子が行馬と結婚して巴流を継ぐと言うのだ。
 志乃から行馬の気持ちを確かめろと言われる遊馬。なんと行馬の遠大な宗家乗っ取り計画だった。
 行馬は覚悟を決めていた。
 眞由ちゃんを幸せにするし、奈彌子さんも笑顔を見せられるようにするし、鶴了さんも帰ってこられるし、
宗家のおじさんは安心するし、亡くなったボンも天国で喜ぶ。
 責任を背負うつもりだった。そうなると問題は遊馬だった。
 坂東巴流の行く末が決まらないと、行馬を宗家巴流の家元にするわけにいかない。
 氷心斎は行馬から遊馬の居場所を聞き、子供の頃から知っている志乃に遊馬の器量を聞く。
 なかなかやるけど、自分が納得できない事は絶対わかったと言わない。
 なんだかんだ言って友達と茶もするし、剣道も弓道も始めた。好きなのだ。しかしその事がわかっていない。
 前にも相談した事を思い出す氷心斎。息子が良い濃過ぎて物足りないと相談したのだ。
 しかし最後に親不孝をした。事故の事を話す氷心斎。息子は先先代の時から働いていた爺やに教わっていた。 爺やは足腰が立たなくなり巴の家を出て行こうとした。
 息子の比呂希は別れの一服を彼のために点てようと思った。
 茶会の水は夜明け前に汲む物だから、北山の湧水を未明に汲みに行き、飲酒運転の車を避けようとして、
重いポリタンクせのせいでバランスを失い、轢かれた。
 爺やは、荷物も置きっぱなしで行方不明になった。志乃からそれを聞いた遊馬は心が落ち付かなかった。
 何か叩くものは無いかと不穏に言うと、座禅をしてみたらと言う。
 わかんないけど、なんでわかんないかはわかった気がする。
 遊馬は比叡山の天鏡院に行って、脚を踏ん張り、「たのもう!たのもう!」と声を張り上げた。

 幸麿は友衛家に結婚の申し込みに行く。
 立派な表具の掛け軸が目につき、ほめたら、良く見るとずいぶん変わった趣味のものだった。遊馬筆の物。
 秀馬は満足げに微笑む。幸麿が遊馬も知っていると知り、遊馬の手紙を持ち出す秀馬。
 「一筆啓上 御父上御母上にはお変わりなくお過ごしのご様子祝着に存じ奉り候 
小生このほど御父上の命に従い比叡山天鏡院に参籠仕り候 一年の遅参となりしことはお許しいただきたく候 今は柴門老師に教えを乞い己の本分と天命とを見定めんと励みおり候 
来る正月老師のお許しあらば三十三間堂の射会に参じたく御父上の御上洛これあらば望外の喜びと存じ候 
小生京にある間いささか詩文に長じ候えば御父上に一編献じ奉り候」
 その詩があの軸。

 雨にもまけず
 風にもまけず
 雪にも夏の暑さにもまけぬ
 丈夫な茶杓をもち
 釜ひとつあれば欲はなく
 自慢せず
 いつも静かに茶筅を振っている
 一日に粗茶一服と
 干菓子と少しの饅頭を食べ
 師の教えを
 だって違うだろうと言わずに
 よく見聞きしわかり
 そして忘れず
 野原の松の林の蔭の
 小さな萱ぶきの小間にいて
 東に茶会あれば、
 行って下足を取り
 西にボテ箱運ぶ人あれば、
 行ってその荷を負い
 南に点前に緊張する人あれば、
 行ってこわがらなくてもいいといい
 北にイジメや嫌がらせがあれば、
 つまらないからやめろといい
 日照りのときは灰のアクを抜き
 寒さの冬は藪で竹を伐り
 みんなに変人と呼ばれ
 疎まれても
 おもねらず
 ひとたび正客となれば趣向を盛り上げ
 次客となれば聞き上手となり
 詰めとなれば気がよく働き
 亭主となれば命を賭して誠を尽くす
 そういう茶人に
 わたしは
 なりたい

感想:とても良かった。ドラマ化希望!どっちの茶杓も遊馬は盗んでいないが、まあ人徳の分仕方が無い。
 彼、売ろうとしたし。鶴了さんも奈彌子さんも全体の事を思うと、駆け落ちと言う事はどうしても出来ないのね。
 弟の行馬、実に出来が良すぎるほど良いが、運動神経無いし、あの頭の良さは宗家巴流向け。
 遊馬は不器用な分、武骨で、剣道も弓道も好きだし、やっぱり坂東巴流は遊馬の方が向いてるね。
 遊馬が点てる茶はおいしいみたいだし。
 京都の人間と言うと嫌らしい感じがして嫌なのだが、
この話に出て来る人達は志乃を初めとして感じが良い人が多い。
 なかには嫌らしい人もいるが。これ読むとお茶とかやりたくなるが、お茶、金かかるし、無理。
 しかし最後の話は哀しかったです。自分の幸福は自分を想ってくれる人の幸福。
 気持はわかるけど、踏ん張って欲しかった…。
 岩手県民としては、石川啄木と宮澤賢治の活躍は嬉しかったです。
 閑坐 静かに座りなさい 喫茶去(きっさこ)まぁ、一服どうぞ

|

« 誰も知らない | トップページ | 南米の大湿原 »

小説「あ~こ」(18)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/45625/40850134

この記事へのトラックバック一覧です: 雨にもまけず粗茶一服:

« 誰も知らない | トップページ | 南米の大湿原 »