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犬は勘定に入れません

「犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」コニー・ウィリス ☆☆☆☆☆

最後まで書いてます。注意!

 時は第二次大戦中のロンドン大空襲後。場所はそのせいで焼失したコヴェントリー大聖堂。
 そこにいるのはカラザーズ、新入生、僕ネッド・ヘンリー、ミスター・スピヴンズ(犬)、そして堂守。
 カラザーズ、新入生、そして僕は2057年の住人だ。タイムトラベルでここに来ている。
 「規則は破るためにある」、「神は細部に宿る」が信条のレイディ・シュラプネルのために。
 彼女は自分のひいひいひいひい祖母さんがコヴェントリー大聖堂の主教の鳥株(良く分らんが鳥が切り株に止まっているような形の鋳鉄製の花入れらしい…)を見て運命が変わったという話に感動し、
焼失したコヴェントリー大聖堂を再建しようと奮闘してい、特に主教の鳥株に固執していた。
 ネッドはここ一週間で12回ぐらい降下していた。どうしても主教の鳥株は見つからない。
 新入生は2057年には絶滅している猫を見て感激している。
 戻ってもレディ・シュラプネルに責め立てられ、ここに送り返されるだろう。
 ミスター・スピヴンズが足元にうずくまり、同情するように僕を見上げた。
 「力を貸せるものなら貸したいと思っているんだろ?きみたちが人間の最良の友と呼ばれてるのも当然だ。
忠実で誠実でたしかな存在。
人間の悲しみに共感し、勝利の喜びを分かち合うことのできる正真正銘の友、
人間にとっては分不相応なすばらしい友人。
戦場でも暖炉の前でも、終始変わらず人間と運命をともにし、
たとえ死と破壊に囲まれようと主人を見捨てることはない。
嗚呼、いと気高き犬よ、汝こそは、ありうべき人間の姿を映す鏡、よりよき人間を毛皮にくるみしもの、
戦争にも野心にも汚されず、富にも名声にも…」
 僕は無理矢理オックスフォードへ連れ戻され、付属病院に放り込まれる。

 時代差ぼけ(タイムラグ)の症状の一つに涙もろい感傷に浸りがちになる事がある。
 僕は明らかに法律で定められている以上の回数、降下していた。
 しかしタイムラグに必要なのは休息で、僕は入院できなかった。
 いくら休みたくたって、きっとレイディ・シュラプネルに又仕事を命じられるに違いない。
 史学部のダンワージー教授の秘書、フィンチがやって来て僕を連れ出す。
 道々フィンチが用を説明をするのだが、タイムラグのせいで頭がうまく働かず、音声もちゃんと認識できず、
よくわからない。
 教授の部屋では教授が女性を叱っていた。
 どうやら女性は過去から物を持ってきてはいけないのに
(そもそも持ち帰ろうと思っても、持って来れないはずなのだが…)、
何かを持ってきちゃったらしく(何かは良く聞き取れない)、それゆえに時間が混乱するかもしれないのだ。
 彼女は水に濡れていたが、ニンフのように優雅で美しかった
(最初に出会った娘と恋に陥りやすいのもタイムラグの特徴だ)。
 ダンワージー先生は僕にヴィクトリア朝に行かないかと言う。用事が済んだら、ゆっくり休めると。
 僕は降下装置の所に連れて行かれる。
 ダンワージー先生は降下のずれを確かめるために僕に「ここで待て」と言い残してどこかに行ってしまうが、
入れ替わりにレイディ・シュラプネルが来る。
 僕は彼女から逃れるために急いでヴィクトリア朝に降下するのだった。

 着いた先は線路上だった。僕は駅に行く。列車から老婦人と若い女が出てくる。
 迎えの人間が居るはずなのだがいないらしい。
 老婦人は僕の存在をうさんくさく思い、迎えを待たずに二人は目的地に行ってしまう。若い男が来た。
 彼は高齢の御婦人二人連れの出迎えに来たらしい。しかしそれらしき人はいない。
 彼、テレンス・セント・トゥルーズはシリル(荷物番に残っている)と一緒に貸しボートで河下りをする予定だった。 しかし帰りの馬車代を払ったら金が足りない。馬車代はご婦人が持ってくれるだろうとあてにしていたのだ。
 そこでボート下り用の格好をしている僕を誘ってきた。
 彼はマッチングズ・エンドまで下るそうだが、その名に聞き覚えがあり、きっとこの男こそ連絡相手と思い、
同行する。

 シリルはブルドッグだった。
 テレンスはプリンセス・アージュマンドという猫を探していたトシー・ミアリングと言う女性に恋をし、
彼女に会いに行くつもりだった。
 途中溺れかけていたペディック教授を救い出す。 三人と一匹はそのまま河下りをする。
 途中首尾良くイフリーのノルマン教会近くの橋で待っていたトシー嬢と会う事が出来たが、
僕は彼女と一緒にいた女性の美しさに感激する。
 しかし時代が違うと嘆いていたら、彼女ヴェリティ・ブラウンは本名キンドル、
ダンワージー先生に叱られていた女性だった。
 彼女が持ち帰っちゃたのはトシーの猫プリンセス・アージュマンド。
 執事のベインが河に放り込んだのを助けてしまったのだ。しかし僕は猫を託された覚えは無かった。
 実はトシーこそが問題のレイディ・シュラプネルのひいひいひいひい祖母で、
ヴェリティはトシーの日記に主教の鳥株の事が書かれているか確かめるために派遣されたのだ。
 僕とテレンスは彼女らと別れ、教授と一緒に河下り。
 僕がシリルが匂いを嗅いでいるバスケットを開けたら中にプリンセス・アージュマンドがいた。
 僕は最初から猫を預かっていたのだった。
 トシーが住むマッチングズ・エンド近くでボートがひっくり返り、
僕らはプリンセス・アージュマンドを連れてマッチングズ・エンドに行く。

 わざわざ日本から輸入までしているほどの金魚好きのトシーの父親ミアリング大佐は
「日本産朱文金の身体的特徴について」という本を書いたアーサー・ペディック教授と意気投合。
 三人ともこのままここに居座る。しかしミアリング夫人はシリルを嫌い、厩舎に寝かせろと言う。
 テレンスはシリルを心配し、僕はシリルと寝る事になる。テレンスの部屋は見張られていて駄目なんだそうだ。  その夜、ベインが僕の部屋に来る。
 プリンセス・アージュマンドは大佐の大切な金魚を食べてしまい、しつけとして河に投げ、
死んでしまったのではないかと心配していたのだ。
 お礼を言われる。
 後からなぜかプリンセス・アージュマンドもやって来て、
僕のベットはシリルとプリンセス・アージュマンドに占領される。

 ご近所のチャティスボーン家に行ったら、そこではフィンチが執事として働いていた。
 どうのような任務かはしゃべれないそうだ。
 トシーはミスターCと結婚するらしいのだが、テレンスと良い感じで、それらしいミスターCはさっぱり現れない。
 テレンスはあの駅にいた若い女性と結婚するはずなのだが。このままでは歴史が変わる。
 ヴェリティは何度も時代を行き来し、赤ちゃん言葉で猫に話しかけ、僕の事を素敵と思い始める(タイムラグだ)。 テレンスとトシーの婚約が発表される。一旦元の時代に戻ってみるとやはり齟齬があるらしい。
 カラザーズが戻れなくなっている。
 僕とヴェリティはミアリング夫人が大好きな降霊会を開き、偽りのお告げで、運命のコヴェントリー旅行をさせる。 確かに主教の鳥株はあったが、ミスターCは見当たらない。
 ただ執事のベインとトシーが鳥株の美醜を巡って意見の対立をしただけだった。
 副牧師はトシーにでれでれ、その様を見たシャープ嬢は帰り、副牧師は彼女を追いかける。
 帰り道、新聞にペディック教授が溺死したと書いてあるのを見つける。
 何の連絡も無いのでそう思われていたのだ。ヴェリティは元の時代に戻ろうとするがネットが開かない。
 僕が戻るが、2018年に出る。若い女性がこっそり入ってきて、そこに若いダンワージー先生が現れた。
 彼女はエリザベス・ビトナー、コヴェントリー大聖堂の最後の主教の妻だ。
 コヴェントリー大聖堂を売り飛ばすなんて夫には耐えられないと訴えている。次は20世紀前半あたりの本屋。
 御婦人方が最初の事件だと思っていたら二件目の事件だったとか、
執事が犯人とか推理小説について話している。
 次はコヴェントリー大聖堂建設の年。そして自分の時代に戻る。
 ヴェリティは今空襲中のコヴェントリー大聖堂にいた。僕はそこに行く。
 コヴェントリー大聖堂の前には何も盗まれないように頑として見張っている女性。そして人の影。
 僕はヴェリティを見つけ、主教の鳥株が大聖堂に無い事を確認する。
 二人が着いたのはマッチングズ・エンドだった。
 テレンスはペディック教授を送って、運命の相手、教授の姪モードに会い、トシーとの婚約を後悔していた。
 しかしトシーは執事のベインと駆け落ちする。初めて自分の言う事に反論したベインに恋をしたのだ。
 ベインの本名はウィリアム・パトリック・キャラハン。ミスターCだった。
 ミアリング夫人がアイルランドの名を嫌って変えさせたのだ。

 時空連続体は自ら間違いを修復する。
 きっかけはコヴェントリー大聖堂最後の主教の妻エリザベス・ビトナーが主教の鳥株を持って来てしまった事だった。
 大空襲の時、コヴェントリー大聖堂の前で頑張っていた女性が、
壊れるはずの無い主教の鳥株が無いのに驚き、空襲を知っていた人間が盗んだと新聞に投書、
それを読んだナチの情報部が暗号が破られたのではないかと考え、暗号を変え、ついにはイギリスを占領する。  故に時空連続体はどんぴしゃの時間と場所にヴェリティを出し、猫を助けさせ、
僕とヴェリティの一連の行動がトシーをコヴェントリーに連れて行き、
副牧師がトシーにでれでれしているのをデルフィニウム・シャープが見て帰って行き、
副牧師が追いかけてプロポーズし、彼女は田舎に引っ込む。
 エリザベス・ビトナーは主教の鳥株だけではなく、多くの物を救出していた。

 しかしヴェリティが僕の考えに異議を唱える。爆弾が直撃とかもっと簡単な方法があるはずだと。
 フィンチは本来殺されるはずだった猫を持ってきていた。歴史に影響を与えないものならば持ってこれるのだ。
 シュミレーションをしていたTJが齟齬の焦点は2678年だったと言って来る。はるかな未来だ。
 つまりこれら一連の騒動は未来の齟齬を修復するためのものなのか。
 とにかく僕とヴェリティはタイムラグのせいだか、歴史修復のせいだか知らないが、結婚する事にし、
過去の物を持ち帰れるとわかったレイディ・シュラプネルは新しいプロジェクトに意欲満々だった。

感想:ええ、前からコニー・ウィリスはユーモアな描写がうまいと分っていました。
 「航路」も「ドゥームズデイ・ブック」も基本的に悲劇的な話しだけど、この手のユーモア描写があったから。
 素晴らしいです。完璧です。最後までドタバタしっぱなし。
 猛女のレイディ・シュラプネルを始め、韻文でしゃべるテレンスから、犬猫まで、キャラ立ちしてる人(?)ばかりです。
 細部の文章までユーモアたっぷり。て言うか、筋より細部が楽しい話しでした。基本的に幸せだし。
 ブルドックは最高です。おまぬけな可愛い話ししか聞いた事がありません。賢い話は無いのか。

関連サイト
翻訳家には快感のツボがある
すみ&にえ「ほんやく本のススメ」
八方美人な書評ページ
ちょっこと一行きり

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