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菊千代抄

「菊千代抄」山本周五郎 「あんちゃん」より 新潮文庫 ☆☆☆☆☆

最後まで書いています、注意!

 菊千代は巻野越後守貞良(えちごのかみさだなが)の第一子として生まれた。
 6歳の時池の魚を捕まえに行ったら、ある子が彼の前を見てこう言った。「やあ、若さまのおちんぼはこわれてらあ」 椙村(すぎむら)半三郎がそう言った男の子をお前は悪いやつだというような意味の事を叫んで突き飛ばした。
 それから菊千代は誰よりも半三郎を好きになった。

 十三の時母が亡くなった。彼が最後に会った時母は「お可哀そうに、菊さま…お可哀そうに」と言って涙を流した。

 十五の時彼は馬で遠出に出た。馬が暴走したが、何とか無事だった。しかし彼は失禁した。
 半三郎が彼を後ろから見てあっと言った。失禁を見たのだろうと気にせず屋敷に帰った。

 菊千代は女だった。巻野家では初めに女子が生まれたらそれを男として育てるという家訓があった。
 そうすれば男子が生まれるというのである。
 思い返して見れば半三郎は菊千代が女である事を知っていたみたいだ。
 菊千代は半三郎と柔術の稽古をした時、彼に押さえ込まれて快かった。
 それを思い出すと憤怒と羞恥で身を裂かれるような烈しい感情に襲われるのだった。

 菊千代は半三郎を刺した。父に世継ぎが生まれ、菊千代は女に戻っても良いのだが、男として生きる事にする。

 菊千代はある日夢の中で暴力を受ける。
 その夢を理解した菊千代は時に発作的に暴力を振るうようになり、このままでは狂ってしまうと山に引きこもる。

 菊千代はそこで二人とも商家生まれなのに、親に反対され駆け落ちをした夫婦を知る。
 二人がお互いを労わる姿を見て胸の奥が熱くなる。その時菊千代は「可哀そうな菊さん、可哀想に」と呟く。
 なぜそんな言葉を呟いたのかわからなかったが…。しかし後にそれが母の言葉であったのを思い出す。

 菊千代は再びあの忌まわしい夢を見るようになる。
 発作的な行動をとるようになり、近くの小屋に住み着いていた労咳の武士、
楯岡(たておか)三左衛門を屋敷内に住まわせてしまう。
 父が腰元たちを連れてくる。

 菊千代が眠っていたら、腰元の葦屋が彼女を愛撫した。彼女は葦屋を殺そうとするが男が止める。
 菊千代がどかぬと斬るぞと言うと彼は胸をはだけて見せて、「お斬りあそばせ、いざ」と言い、衿を合わせた。

 男、楯岡三左衛門は半三郎だった。半三郎は菊千代をお護り申し上げようとここまで来たのだった。
 菊千代は半三郎に女にしておくれと訴える。障子に曙の光が差していた。

感想

 こんなのも書いているんですね、山本周五郎は…。知ってる人いるのかなと思ったら32刷め。充分読まれてます。 さすがは山本周五郎。

 彼女が周りに当たる様はつらいものがある。自分でもわかっているけど、止められない。
 まあよく考えればうっかりさん過ぎるが(自分で察する事は出来なかったのか)、
男じゃないと急に言われても困る。
 彼女が誇り(?)が強いというのもネック。
 確かに半三郎にどう思われていたのかを思うと、私でも叫びたくなると思う。
 葦屋、父に言い含められていたのかもしれないけれど、菊千代にとっては慰めにはならないどころか狂いの元だ。 最後は少し救いだけど…。

 「ふるーつばすけっと」という漫画のある登場人物が男と思っていたら女らしい。
 彼女も周りに当たりちらし、不幸を撒き散らし、嗚呼きっとこの人も不幸なんだなと思っていたが、
男に見えて女というのが彼女の不幸の元なのかな。
 まだそこまで読んでないからわからないが…。菊千代の苦悩と重なって見えました。
 傷つけている人間もその事により傷ついている場合もあるだろう(そうとは限らないが)。
 この漫画の場合、彼女の心に寄り添い、彼女を救う事が全てを解決するんじゃないかな。
 あれだけ傷つけられれば難しいかと思うが…。
あんちゃん

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