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麦の海に沈む果実

「麦の海に沈む果実」恩田陸 ☆☆☆☆
序章「」「駅」「湿原」「張出窓」第一章「駅」「青の丘」「緑の館」「ファミリー」第二章「ルームメイト」「食堂にて」「天使の夢」第三章「三月一日」「図書館の少年」「パーティの話題」「第一の失踪事件」「ある解答」「第二の失踪事件」第四章「招待状」「四人の客」「本の題名」「闇からの声」「現れたもの」第五章「青の丘の過去」第六章「春の気配」「ワルツの稽古」「祭りの準備」第七章「贈り物」「祭りの始まり」「最終日の朝」「開幕」「林の中の影」「意外な人物」「舞台の上で」「宴のあと」「深夜の幕切れ」第八章「記憶の底から」「約束」「再びお茶会へ」第九章「百科事典の中に」「薔薇の迷路」第十章「誰が少女を殺したか」「嵐の告発」第十一章「告白」「不安な夜」「深夜の部屋で」第十二章「疑惑の影」「混乱」第十三章「夏至の午後」「ゲームの行方」第十四章「遠い約束」第十五章「秋の訪れ」「十月はたそがれの国」「夜明け」終章
麦の海に沈む果実講談社文庫

 これは、私が古い革のトランクを取り戻すまでの物語である。

 私は子供の頃、パリに住んでいたことがあると思っていた。
 しかし祖母によるとパリどころかろくに家から出たこともないと言う。ではあの丘の記憶は…。

 列車のボックス席。私の名を呼ぶ少女の声。いや、あの時はあの青い丘を見てさえいない。
 少女、麻理衣と約束を交わすのはもっとあとだ。

 湿原で舞っている少年。少女は絶叫する。湿原に吸い込まれる少年。

 そして黎二の声。

 「麦の海に沈む果実」

 わたしが少女であったころ、
 わたしたちは灰色の海に浮かぶ果実だった。

 わたしが少年であったころ、
 わたしたちは幕間のような暗い波間に声もなく漂っていた。

 開かれた窓には、雲と地平線のあいだの梯子を登っていくわたしたちが見える。
 麦の海に溺れるわたしたちの魂が。

 海より帰りて船人は、
 再び陸(おか)で時の花びらに沈む。

 海より帰りて船人は、
 再び宙(そら)で時の花びらを散らす。

 二月の最後の日。水野理瀬はトランクを盗まれ、そのままトランク無しで湿原の向こうの丘の上の学園に入る。

 校長の家に行く途中で、きれいだが虚ろな表情の少年を見る。家にいた校長は威圧的な美しさのある人だった。
 スカートの裾を翻し、ハイヒールをはいている校長を理瀬は女と思ったが、校長は男だった。
 校長はその日の気分で男になったり女になったりするのだ。

 ファミリーと言われる中等部と高等部を縦割りにした班。
 彼女のファミリーとして紹介された人達の中には成績トップの聖(ひじり)がいた。
 そしてやはりファミリーの一員である黎二が理瀬に聞いてくる。「どうしてこんな時期にここに来たの?」
 この学園では新入生は三月に入る事になっていたのだ。

 寄宿舎の自分の部屋にいると乱暴にドアがノックされる。
 ドアをノックした元気な美しい少女は憂理と言って、理瀬の押しかけルームメイトになる。

 図書館であの校長の家の前であった少年に追いかけられるが、黎二に助けてもらう。
 そこで黎二から「三月以外に入ってくる者があれば、そいつがこの学校を破滅に導くだろう」
と言う言い伝えを聞かされる。

 ファミリーの一員だった功と麗子。二人は不可解な形でいなくなっていた。
 この学園には才能のある子達も多く入っていたが、
複雑な家庭の事情により厄介払いと言う形で入っている裕福な家の子女達もいた。
 そのような事情により、学園の外にいる元生徒達とは連絡が取れなかった。
 校長は二人とも生きていると言うが、言葉どおりには受け取れない。

 ある日校長のお茶会に呼ばれる。お茶会には理瀬と憂理の他に、黎二、聖が呼ばれていた。
 校長は理瀬を霊媒にして、麗子の霊を呼ぶための降霊会を開こうと言う。
 麗子が生きている事を信じていない黎二や聖に生きている事を証明するため。しかし呼び出されたのは功の霊。
 降霊会が終わり、校長が明かりをつけようとしたら、絶叫が響き渡る。
 ドアの外には背中にナイフを突き立てられた、校長の取り巻きの一人、修司の死体があった。

 四月、理瀬はヨハンと言う美しい少年と知り合いになる。
 彼は女の子達に非常に人気があり、理瀬への風当たりが強まる。そして…。

 全寮制寄宿学校と言うと私にとっては少女漫画の世界。美しい少年少女。迷路みたいな造りの学園。お茶会。
 薔薇の迷路。天井裏に隠されている本。謎の少年。
 これだけでも私はこの物語を愛するのだが、その上、実は毒を持っている少年少女と来た日には………
たまりません。
 ちょっとした毒は極上のスパイス!

 ところでこの話は誰かの頭の中の物語の話なのかな。序章がとってもあいまいだから…。わからない。
 記憶があやふやなだけなのかな。

関連書籍:「黄昏の百合の骨 」水野理瀬、後日談「図書室の海」水野理瀬の幼少の頃の短編がのっている。「殺人鬼の放課後―ミステリ・アンソロジー2」ヨハン、後日談の短編がのっています。

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