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酔っぱらった馬の時間

酔っぱらった馬の時間」2000年 イラン 1h20 配給:オフィスサンマルサン ユーロスペースにて ☆☆☆☆
監督・製作・脚本:バフマン・ゴバディ 撮影:サイド・ニクザード 音楽:ホセイン・アリザデ 編集:サマド・タウゾイ

 子供達が密輸する品が壊れないように新聞紙で包む仕事をしている。
少女アーマネ(アーマネ・エクティアルディニ)はその仕事をしながら、
障害のある兄マディ(マディ・エクティアルディニ)の面倒をみている。
そして別の所で仕事していた兄アヨブ(アヨブ・アハマディ)と共に他の子供達と一緒に密輸業者のトラックで帰る。
密輸業者はノートも密輸しようと子供達に隠して持てと言うのだが、国境でばれる。

 彼らはクルド人。イランとイラクの国境のあたりに住んでいる。
アーマネ兄弟はイランのクルド人だが、さっきのトラックにはイラクのクルド人の子もいた。
この映画はクルド語で話しているそうである。国を持たない最大の少数民族として有名である。

 兄弟の母親は末の妹を生んだ時に亡くなっていた。父親は密輸の仕事をしていた。
兄弟が帰った時、父親は地雷にやられ死体となって帰って来た。
長女、マディ、アヨブ、アーマネ、末の妹の五人兄弟。

 12歳のアヨブが家長になった。アヨブは学校を止め、15歳の兄マディの手術代を稼ぐため、密輸の仕事をする。
マディは手術しないと1ヶ月持つかどうかで、手術しても余命は7~8ヶ月と医者に言われる。
マディはしょっちゅう薬を飲み、注射を打たれる。

 アヨブは重い荷を背負い、どう見ても歩きにくい雪山を登る。国境には地雷が埋まっている。
警備隊は密輸人を見つけたら撃ってくる。非常に危険な仕事だ。
アヨブはマディにボディビルダーの写真をおみやげに持って来、アーマネにノートを買ってやる。

 叔父さんがけんかで怪我をし、アヨブは叔父さんからラバを借りて、ラバで密輸の仕事をする。
警備隊に見つかり逃げる。

 帰ったら、姉の結婚話が決まっていた。
アヨブは自分に相談もせずと姉の結婚話を決めた叔父さんを怒るが、子供扱いされただけだった。
結納金をもらわない代わりに、マディをイラクで手術を受けさせるという条件だった。

 マディを荷物のようにラバにくくりつけ(マディは小人だ)、長女はラバに乗り、叔父が傍らを歩き、
雪山を越えてゆく。
アヨブも追いかけてゆく。しかし嫁ぎ先の姑がマディは要らないと言う。10人も子供がいるのだ。
叔父は、では離縁だと言うが、それは駄目だと姑は言う。結局結納金はラバ一頭ということになる。

 アヨブはイラクでラバを売って、その費用でマディに手術を受けさせようと、マディを背負い、ラバを引っ張って、
密輸隊と一緒に行く。
警備隊に見つかりそうになり、逃げる密輸隊。
寒さ対策のためラバに酒を飲ませていたのだが、ラバはすっかり酔っ払い、なかなか逃げてくれない。
途方にくれるアヨブだが、ようやくラバが動いてくれる。密輸隊とはぐれ、たどり着いた先は国境だった。

 暗い映画と評判で戦々恐々だったが、それ程でもなかった
(「靴みがき」や「地下水道」の方が暗い)。
見てすぐ引き込まれた。

 静かで緊張感あふれる映像。マディの顔は印象的(マディ本人が難病だ)。
寒々とした中、こごえてしまいそうなマディは見ていてハラハラする。貧しくても兄弟の仲が良いのは救われる。
アヨブは12歳だが立派な家長だ。12歳で大人の役割を押し付けられると言うのは不幸なんだろうが…。

 最後、国境にアヨブが着いた所で終わるのだが、地雷はあるは、
警備隊はいるはでハッピーエンドとはとても言えない。
手術をした所でマディの寿命は幾ばくも無い。これからもつらい事が続くのは確かな事だ。

 

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