« さいたまチェーンソー少女 | トップページ | 邯鄲 »

しずれの音 他

武家用心集乙川優三郎 田蔵田半右衛門 ☆☆☆☆☆

 倉田半右衛門は八年前から釣りをするようになった。ある事件がきっかけである。
歩いていたら、一人対数人での斬り合いにぶつかり、その一人の方が友だったのである。
友に加勢したら、いつの間にか友は逃げ、数人の武士達は捕り方だった。
友は悪い事がばれ、逃げる所だったのだ。半右衛門は石高を減らされ、お役も閑役にまわされたのだった。
それ以来、人付き合いを避け、釣りをするようになったのだ。
親戚中にバカにされたが、妻は何も責めず、親戚の盾になってくれた。
 そんな時、行き来の無かった兄が突然現れ、ある重職が不正をしたので、斬ってくれと頼まれるのだった。
あまり気の進まない半右衛門は(妻も反対)重職の事を調べるのだったが…。
 鬱屈した思いはあるものの、淡々と生きる主人公。
調べるうちに周りに対する見方も変化し、最後に自分のいたらなさを知る。
そしてやはり淡々と生きることを選ぶ。ちゃんと多面的な物の見方をしようとする主人公に好感を感じる。

武家用心集乙川優三郎 しずれの音 ☆☆☆☆☆ 

 ええ!!泣きましたとも!声を上げて!(私は涙もろい)
 寿々はもう嫁に行って、娘が一人いる女。彼女は実家にしょっちゅう行く。
なぜなら母が寝込んでいるからだ。兄嫁は体が弱く、何かと言うと彼女を呼ぶのだ。
 寿々は母の連れ子で兄とは血が繋がっていない。
母は後妻に入ったとたん夫を亡くし、二人を苦労して育てたのだった。
苦労がやっと終わったと思ったら、寝付いてしまった。
 そんな時、突然兄にしばらく母を預かってくれと頼まれる。
兄嫁が実家に戻って、戻ってこないと言うのだ。
兄嫁の実家も、体の弱い兄嫁を心配し、離縁してくれと言っていると言うのだ。
寿々は母親を預かる。しかし待てど暮らせど兄からは何の連絡も無く、
夫が兄嫁の実家に尋ねると、そんな話は初耳だと言う。夫は怒り、母親は元気を無くしていった。そして…。
 兄嫁は体が丈夫では無く、姑の世話は大変なのだろうと思うのだが、
やはり兄達のやり口は汚いとしか言いようが無い。まともに頼んでも駄目だと思っているにしても…。
確かに実の娘の方が良いとは思うのだが、夫に対する遠慮というものがある。
しかしただひたすらに苦労して二人を育てた母親を思うとやりきれない。最後の救いがありがたかった。

武家用心集乙川優三郎 九月の瓜 ☆☆☆☆☆

 映画ブロードキャスト・ニュースを思い出しました。
 太左衛門はそれなりの地位まで上り、隠居がみえる年になった。
妹の娘の結婚式で気になる顔を見る。
それはかつて太左衛門の讒言(上司の指示)により出世の道を絶たれた友の息子の顔だった。
 彼は部下に友の現在の様子を見てきてもらうが、友はすっかり隠居が身についていて、
一人で畑仕事をしていると言う。太左衛門は苦労人らしい妹の婿に友の現在の心情をどう思うか聞く。
この一連の動きの中で、太左衛門の心情は変化する。
隠居が見えてくると、出世にはあまり意味が無かったと思う。
そしてこめつきバッタみたいに頭を下げながらお酌をする妹の婿を初めは男らしくないとイヤに思うが、
最後にはいい婿だと思う。そして友に会い、友に負けたと思う。
 多様な価値観を太左衛門は知り、気持ちの良い思いをする。すがすがしい話だ。

|

« さいたまチェーンソー少女 | トップページ | 邯鄲 »

武家用心集(3)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/45625/1194752

この記事へのトラックバック一覧です: しずれの音 他:

« さいたまチェーンソー少女 | トップページ | 邯鄲 »